11月19日に東証マザーズに新規上場した日本ベリサインの株価が、事前の大方の予想を上回る順調な推移をみせている。電子認証サービスというIT関連のなかでも最先端分野のトップ企業だけに投資家の人気が沸騰しているわけだが、果たしてその株価動向に不安はまったくないのか。
日本ベリサインは米国ベリサインの日本法人で、日本国内において公開鍵暗号基盤(PKI)を用いた電子認証とその関連サービスを提供しており、業界トップの地位を占めている。具体的には、ウェブサイトの実在性を証明し、ウェブサーバとブラウザ間の通信の暗号化を実現するサーバ証明書発行サービス、電子認証局構築のアウトソーシングサービスなどを手掛けている。
すでにインターネットは個人の日常生活、企業活動にとって必要不可欠なものとなっているが、利便性は高い一方で、必ずしもネット上の相手が実在するかどうか明確に確認できないという点で危険性も否定できない状態となっていた。こうした状況を受けて、同社では申し込みのあった顧客を確認・認証して「セキュアサイトシール」を発行し、ウェブサイトの実在性を証明することを主力事業としている。また、法人が取引先や顧客に対して実在を確認、同社が認証をアウトソーシングする法人向けの事業も手掛けている。
同社の設立はWindows 95発売後の1996年。当初は苦戦を強いられていたものの、インターネットの本格普及で2000年ごろから事業が本格化してきた。顧客は大手金融機関、大手メーカーをはじめとして徐々に拡大している。
上場初日の19日は、寄りつきから大量の買い物を集める展開となり、公開価格48万円の2倍に相当する96万円買い気配のまま終了、ようやく上場2日目の20日に100万円で初値をつけた。その後も買い人気は衰えをみせず、株価は順調な上昇をみせている。先週末の11月28日には、一時150万円(終値は144万円)をつけており、上場後わずか7営業日で、株価は早くも公開価格の3倍水準に達したことになる。
同社の川島昭彦社長は新規上場に伴う会見で「日本におけるインターネットの普及とともに認証事業の市場を開拓し、現在ではシェア80〜90%のリーディングカンパニーとなった。当社の方式は事実上の業界標準となっており、今後さらなる市場拡大が見込まれる」と自信をみせている。
一方、外国証券のアナリストは「この電子認証という事業分野は日本ではスタートしたばかりで、まだ一般の認知度は低い。しかし大手金融機関、メーカーなどで導入されているため、今後はトップダウン方式で市場が急拡大していく可能性が高い。また、同社は生産・物流管理などで利用されるICタグの情報管理サービスにも進出する方針を打ち出すなど、多角化にも積極姿勢をみせている」としながらも、「株価150万円で試算される今期のPERは200倍を大きく上回る異常に割り高な水準となっているとも確か。この株価には、将来的な急成長を見込んだ期待を含めた先物買い的な部分があり、株価面ではある程度の波乱展開も覚悟しておかなければならない」としている。
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