「たった1人で中継も可能」:ドコモと文化放送、FOMAを使った音声中継システムを共同開発

藤本京子(CNET Japan編集部)、岡田大助2003年11月17日 20時16分

 NTTドコモと文化放送は11月17日、FOMAを使った高品位音声中継システムの共同開発で提携すると発表した。2004年夏ごろの導入を目指して開発を進める。

 従来、街角などからのラジオの中継放送を行う場合、無線技術者や臨時回線、中継ラジオ車などの手配をしなければならず、コスト面で負担が大きかった。このような中継現場においてFOMAのデータ通信を使ったシステムを開発すれば、レポーター1人が現場に行くだけで中継が可能となり、コストの大幅削減につながる。また、中継エリアの制限をなくすことができるという。

 FOMAを活用したシステムを導入することで、走行中の自動車からの生放送といった移動しながらの中継放送が簡単に行えるようになる。また、地上からの中継波が届かないエリアでもFOMAの通話エリア内であれば高品位な音質の中継放送が可能だ。また、レポーターが中継放送を続行しながら移動することもできる。開発するシステムは、レポーターが肩にかけても負担にならない大きさと重量を実現する予定だという。

 記者会見場では、実際にこのシステムを使ったラジオの生放送が行われた。文化放送のアナウンサー、寺島尚正氏がまず携帯電話でラジオの生放送に向かって話しかけ、次に音声中継システムの試作機を使って中継を行い、高音質をアピールするデモを行った。

試作機を前に握手を交わす、文化放送の代表取締役社長 佐藤重喜氏(左)と、NTTドコモ常務取締役MM事業本部長 谷公夫氏
寺島氏は、「これまで緊急なニュースが入った場合、スタッフを集められずにやむを得ず電話中継となっていたことがあったが、これで大がかりなスタッフを伴って中継に行く必要もなくなる。実際にはスタッフがいてくれたほうが心強いが、アナウンサー1人で現場に行っての中継も可能だ」と語る。

 NTTドコモのMM企画部技術戦略担当部長、松木彰氏はこの新システムについて、「FOMAの高速通信を活かした技術だ。また、このスピードの上にVoIP技術を搭載した。それだけでは普通の音声と変わらないが、そこにコーデックの技術を搭載し、高音質を実現した。ただ、データを送ることになるので遅延が発生する。詳細は言えないが、その部分も新技術を導入し、遅延が発生しないようにした」と語る。

 文化放送の代表取締役社長、佐藤重喜氏は、「これは通信と放送の融合が実現した形のひとつ。ラジオ会社にとってコスト削減につながるだけでなく、この新システムで新しい番組開発にもつながるだろう」としている。

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