松下電器はデジタル家電で本当に変身できるのか

 株式市場では依然として「ハイテク株」に分類されている松下電器産業だが、一般に家電メーカートップとしてのイメージはあるものの、ハイテク企業としての印象は薄くなる一方というのが実情だ。その松下電器に、ハイテク企業への回帰を期待する動きが高まっているという。その鍵を握るといわれるのは、同社のデジタル家電事業である。

 松下電器は10月28日に9月中間期決算を発表した。それによると、リストラ効果とデジタルAV(音響・映像)機器強化の戦略が奏功し、9月中間期の連結営業利益は前年同期比59%増の796億円と従来予想を上回った。さらに、外国為替市場での円高進行にもかかわらず、今3月期通期の連結営業利益の見通しについても、従来予想の1500億円(前期比18%増)を継続している。準大手証券の電機担当アナリストからは「デジタル家電が本格的な収益向上のけん引役となってきている。同社はまさに電機業界の勝ち組で、ソニーとは対照的」との評価も出ているほどだ。

 しかも、通期の利益計画は「クリスマス商戦が不振に終わり、円高がさらに加速するといった、いかなる逆風の状況下でも確保すべき数字と考えている」(松下電器産業 代表取締役社長、中村邦夫氏)というように、極めて保守的な数字であり、多くの調査機関が通期の業績増額を有望視しているほどだ。

 UFJつばさ証券では、「強い収益モメンタムが持続される中で、PBR(株価純資産倍率)1倍は妙味が大きい」として、投資判断を従来の「B」(中立)から「A」(強気)に引き上げている。さらに、日興シティグループ証券でもリポートを発表し、10月29日付で松下電器の今期の連結営業利益は1700億円水準が有望とし、投資判断を強気の「1M」継続とするとともに、目標株価を1750円としている。

 また立花証券でも、10月30日付のリポート紹介銘柄として松下電器を取り上げ、今期の連結営業利益を1600億円と予想、「構造改革を続行させ、その成果を業績面に着実に顕在化させつつある経営は評価できる」として、投資判断を「やや強気」としている。

 松下電器の収益構造を変化させているのは、PDPテレビ、DVDレコーダー、携帯電話、カーエレクトロニクス製品などのいわゆる「デジタル家電」と呼ばれる商品群だ。これらの商品を含むAVCネットワークス部門の連結営業利益は、9月中間期で583億円(全体の営業利益の75.8%)と前年同期比2.23倍にハネ上がっている。同社のお家芸である家電に「デジタル」が加わったこの新分野の成長に、改めて注目が集まっているわけだ。2008年の北京オリンピックを控えて経済成長の著しい中国を中心としたアジア地域や、欧米向けにも巨大な需要が想定できる。

 株価は現在1500円前後の水準で推移しているが、9月9日に付けた年初来高値の1590円を上回ってくれば、来年にかけて一気に2000円を目指す展開も期待できそうだ。

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