東京証券取引所は21日、ヤフーについて28日からの東証1部上場を承認すると発表した。早ければ7〜8月にも上場と取り沙汰されてきただけに「待ちに待った」と期待感を寄せる見方がある一方で、「ヤフーはジャスダック市場にあってこそ、その存在感を発揮できた銘柄。東証1部に上場すれば、その存在感は埋没してしまうのでは」と懸念する向きもある。インターネット関連銘柄相場全体の動向にも大きな影響を与えるとされるヤフーの今後の株価動向を探った。
東証1部への上場が発表された翌日22日のヤフーの株価は、寄り付きは買い物が先行して買い気配を切り上げる展開となり、一時は前日比19万円高の191万円をつける上昇となった。しかしそれも前場中ごろまでで、その後は一転売りが優勢となり、結局大引けでは同2万円安の172万円まで下落するという大波乱の展開となった。
ヤフーは21日に東証1部への上場承認を受けると同時に、9月中間期の決算を発表し、今回初めて下期も含めた2004年3月期通期の業績についても見通しを発表した。それによると、2004年3月期の連結売上高は710億円〜730億円(前期実績590億9500万円)、経常利益は365億円〜375億円(同235億2400万円)、純利益220億円〜225億円(同120億9600万円)と、幅を持たせた予想となっている。東証1部上場をきっかけに、従来から投資家の要望が強かった業績予想の公表に踏み切ったという。なお、9月中間期の連結決算は、主力のネット広告事業をはじめ、オークション、BB事業などが総じて順調に推移したことから、売上高は331億円(前年同期比41%増)、経常利益は175億円(同87%増)と大幅な増収増益となった。
こうした業績の絶好調ぶりや、東証1部上場の日程発表という好材料が表面化したにもかかわらず、買い物が寄りつき直後しか続かず、株価が波乱展開となった背景について外国証券のアナリストは、「ヤフーの株価が9月25日の株式分割権利落ち後からほぼ一貫して上昇基調にあり、高値警戒感が出ていたことがある。ある程度の好業績や東証1部への上場は、すでにかなり株価に織り込まれており、ポジティブサプライズの度合いが小幅に止まったようだ。したがって、いったん株価の上昇が止まると急速に高値警戒感が広がり、利益確定売りが先行したようだ」としている。
それでは今後の株価推移はどうなるのか。すでにPER(株価収益率)など一般的なバリュエーションによる株価判断が通用しない現状を踏まえると、投資家の関心は東証1部上場によって今後予定されるTOPIX(東証株価指数)採用に伴う、組み入れ需要に尽きるようだ。22日終値のヤフーの時価総額は3兆2795億円で、TOPIX全体の1%強を占める。組み入れは、新規上場した銘柄が5営業日以内に終値ベースで1日でもTOPIXの1%を超えた場合、市場への影響を抑えるため2回(12月1日、2月2日)に分けなくてはならないが、現時点でヤフーの時価総額がTOPIXの1%を越えるかどうかは流動的な状態だ。大手証券の試算によれば、組み入れ1回のケースでは11月28日に4万8130株の買い需要が発生、インパクトは直近3カ月平均(売買代金ベース)の9.8倍規模に相当する。2回のケースでは11月28日と1月30日に買い需要が分散され、1回当たり約2万4190株になるという。
過去の東証1部上場銘柄では、TOPIX採用に伴う思惑買いや、実需の買いで組み入れ日直前までの株価は上昇するものの、採用と同時に目的達成に伴う材料出尽くし感から下落に転じるケースが多いようだ。
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