富士通の株価が、先週末17日の東京株式市場で一時前日比22円高の712円まで買い進まれるなど、6営業日続伸で700円台に乗せてきた。株価が700円の大台を回復したのは2002年8月1日以来、約1年2カ月ぶりのことだ。なぜ、いま富士通の株価が突然動きはじめたのか。
富士通の株価上昇について準大手証券の投資情報部では、「日本よりひと足先に行われた米国の決算発表で、インテルなど半導体関連銘柄の業績が総じて好調な見通しとなった。これを背景に、富士通にも業績回復期待感が高まっているようだ。また、東京市場における最近のネット関連やソフトウエア関連銘柄の株価上昇も支援材料となっているようだ」としている。
さらに、株価上昇の直接のきっかけとされているのが、今月16日に発表された「富士通が京都大学学術情報センターからスーパーコンピュータを受注した」とのニュースだ。富士通は、スーパーコンピュータ11台を含むシステムを今年8月に受注、2004年春に納入する。納入する機種「プライムパワーHPC2500」は処理能力が毎秒9.185テラフロップス(テラは1兆)と、これまで同センターに納入している富士通製品の18倍という。富士通には月額1億円のレンタル料金が支払われる。
外国証券のアナリストは「直接のきっかけは京大からのスパコンの受注報道。さらに、ITバブル期に買われていたソフトバンクやヤフーの株価が急騰していることから、インターネット証券を通じた個人投資家を中心に連想買いが増えているようだ」としている。
ところが、こうした一般に市場で取り沙汰されている以外の好材料を指摘する市場関係者もいる。中堅証券の半導体担当アナリストは「市場の一部には、富士通が国内半導体ベンチャーのアイピーフレックス(非上場)の筆頭株主(29.4%保有)であることを買い材料にしている向きもある。同じ株主で、アイピーフレックスに社外取締役を派遣しているドリームインキュベータは、15万円台だった株価がここ6営業日で一気に倍化して30万円となる急騰ぶりをみせている」と指摘する。アイピーフレックスは、圧倒的な世界シェアを誇るIntel製MPU(超小型演算処理装置)、Pentiumとは異なる方式を採用し、1回の指令で100以上の演算が可能なMPUチップを開発。来年1月に新開発の本格量産型チップを市場投入する。さらに同社は、早い時期での株式上場を視野に入れているという。
NECが、NECエレクトロニクス(7月)、NECシステムテクノロジー(9月)の両子会社の新規上場による株式含み益の増大で株価を上昇させたことを考えると、富士通にとってアイピーフレックスが「虎の子」的存在であることは確かなようだ。
ただ富士通の場合、足元の業績推移は依然として予断を許さない状態にある。したがって9月中間期の決算発表の数値いかんでは、株価が波乱展開となることも覚悟しておかなければならない。
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