太陽はまた昇るか? 戦略の見直しを迫られるサン

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 Sun Microsystemsに関する最近のニュースは浮かないものばかりだ。

 9月末にSunは、現金外費用が10億ドルに上り、直近の四半期の決算が大幅な赤字となる見込みを発表した。証券アナリストたちは今回の発表を、Sunが中核事業であるサーバ分野の価格競争でIntelに破れた証拠だと受けとめている。Merrill LynchのアナリストSteven Milunovichは、Sunの最高経営責任者(CEO)Scott McNealyにあてた公開書簡を発表し、さらなるレイオフを断行して経費を削減しない限り、「Sunは大半のユーザーにとって無意味な存在になり、やがては買収されることになるだろう」と警告した。

 しかし、こうした厳しい批判を受けても、業界関係者はSunが破綻する心配はないと見ている。

 ITアナリストや顧客は、Sunには実質的に2つの側面があると考えている。ひとつは財政難にあえぐSunだ。こちらのSunはUnixサーバに過度に依存しており、ネットバブル時代には高収益にまかせて膨脹し、必要以上の従業員を採用したり、高額の不動産リース契約に次々とサインしたことで知られている。もうひとつは技術革新者としてのSunだ。こちらのSunはネットワークコンピューティングとJavaを生み、ハードウェアアーキテクチャとオンデマンドシステム分野で業界の技術革新をリードしている。

 Sunの大口顧客として大きな影響力を持つGeneral Motorsの最高技術責任者(CTO)Tony Scottは、ひとつめのSun、つまり古いSunだけを見ていると全体像を見失うと警告する。「Sunは有益で、重要で、息の長いインフラ技術を数多く生みだしてきた。Sunが強みを発揮できる分野はたくさんある」とScottはいう。

 当座の問題が存在することは確かだとしても、Sunはすでに将来を見据え、現実的な技術計画を用意しているとScottらは主張する。Sunはこの戦略の一部を、先月開催されたSunNetworkカンファレンスで発表している。

 Sunの新しい挑戦を支えるのは、同社が保有している数々の資産だ。それには知的資本や、システム管理構想N1のような開発中の製品なども含まれる。最近発表されたソフトウェアJava Enterprise Systemは、1ユーザーあたり年間100ドルという手頃な価格で、すでに高い評価と多数の顧客を獲得している。また、定評ある研究開発部門では効率的でパワフルなハードウェアの開発が着々と進んでいる。

 ここ数カ月の業績不振にも関わらず、影響力の大きい大口顧客が去っていないことが、Sunの安泰を示す何よりの証拠だとアナリストや情報筋はいう。不安材料はあっても、Sunの現金および有価証券保有高は約57億ドルに達している。

 「製品戦略の面からいえば、Sunは復活基調にあると思う。Javaをはじめとして、Sunには収益源になりうる重要な資産が豊富にある」と市場調査会社RedMonkのアナリストStephen O'Gradyはいう。

 これはSunにとってよいニュースだ。悪いニュースは、SPARCサーバ事業の先細りが確実になり、復活する見込みもないことである。

 これ以上不調がつづけば、Sunの陣地を虎視眈々と狙っている競合他社に市場シェアを奪われるのは時間の問題だ。強敵IBMのソフトウェア事業部バイスプレジデントSteve Millsは、「(Sunは)まだ、ソフトウェアを軸としたビジネスモデルに完全に移行できていない。ソフトウェアの面では、Sunのビジネスモデルは不完全だ」と指摘する。

 経営面、特に経営トップの弱さを指摘する声もある。最近はやんちゃなMcNealyも発言のトーンを抑えるようになっているが、顧客が聞きたいと思っているのはSunが自分たちに何をしてくれるかであって、McNealyが強迫観念のように繰り返すMicrosoft批判ではない。

 「McNealyにはMicrosoftにこだわるなといっている。確かに一部の製品分野ではMicrosoftとSunは競合関係にある。しかし、両社の闘いはむしろ覇権争いに近い」とGeneral MotorsのScottは指摘する。

新しいSunの姿はいかに?

 古いSunに代わり、新しいSunが生まれるとするなら、それはどんな姿をしているのだろう。その答えは、同じように一度は滅亡寸前といわれたコンピュータ業界の巨人、IBMの例に学ぶことができるかもしれない。

 1993年頃、IBMは自社製のメインフレームやミニコンシステムの売り上げが鈍化したことに気づいた。この時IBMは製品開発ではなく、顧客のビジネスを支えるサービス分野に投資をするようになる。10年後の今、IBMのGlobal Servicesは業界有数のブランドに成長している。

 SunはN1構想によって単なる部品の供給業者から巨大なシステムインテグレータへ、つまりあらゆるブランドのハードウェアとソフトウェアをつなぐ仲介者へと、徐々に脱皮していく考えだ。SunのCTO、Greg PapadopoulosはCNET News.comの取材に対し、Sunは効率的な内部システムを構築することで、企業の悩みの種となってきたテクノロジーの切り替えコストを軽減することができると語っている。

 この課程でお蔵入りになってきた数々のテクノロジーも製品化され、Sunの収益に貢献するようになるだろう。ネットワーク上の機器を統合するJavaベースのソフトウェアJiniや、その関連技術であるJxtaは、Sunが市場戦略の構築に手間取っている間にお蔵入りになった技術のひとつだ。

 また、McNealyはCNET News.comとのインタビューのなかで、Sunは少なくとも3つのアプリケーションサーバ製品を持っているにも関わらず、J2EEアプリケーションサーバで後れをとったことを認めている。

落とし穴はどこか

 しかし、Sunの戦略も完璧とはいえない。たとえば、下降の一途をたどっているサーバ事業が前進の足かせになる可能性は十分にある。

 SPARCシステムの売り上げがJava Enterprise Systemやその先にあるN1の成長をしのぐスピードで落ち込めば、Sunは窮地に追い込まれるだろう。そうなれば、経営トップの交代やレイオフを余儀なくされる可能性もある。

 今のところMcNealyの退陣を求める声はほとんどないが、Merrill LynchのMilunovichらはSunに有能なナンバー2が必要だと主張する。MilunovichのレポートはOracleのCEOと元右腕の関係に言及し、「Larry EllisonですらRay Laneを必要とした」と述べている。

 Sunの担当者はこれに対し、「Sunの経営チームはきわめて層が厚い。どのメンバーも最高業務執行責任者(COO)に匹敵する人材だ」と反論している。また、アナリストらが再三にわたって縮小を求めてきた巨大な研究開発部門は、赤字にも関わらず拡大をつづけている。

 6月締め四半期の決算報告によると、Sunの製品収入は前年比20%の減収となっている。しかし、J.P. MorganはSunの研究開発費が、現在よりも収益が38%も高かったネットバブルの絶頂期より14%も高い額に達していることを指摘する。Papadopoulosは、N1構想を実現するために全社規模のインフラ整備が不可欠だったためと説明している。

 Sunは貴重な収益源であるサーバ事業の延命措置として、競争の激しいサーバ製品の価格を引き下げた。この措置のおかげで出荷台数は目標値を達成しているものの、その内訳をみると、利幅の厚いSPARCシステムよりも利幅の薄い低価格サーバが増えていることが分かる。

 それだけではない。Milunovichのレポートによれば、同じように値下げをしたIBMやDellが売り上げを回復しているのに対し、Sunのサーバ収入は落ち込んだままだという。

 今期の数字はまだ確定していないが、サーバ市場においてSunは、LinuxサーバやWindowsサーバを積極的に売り込んでいるIBMにシェアを奪われてしまったと見るアナリストが多い。企業のIT投資が拡散的になったことで、IT企業は軒並み苦戦を強いられているが、特にSunのダメージは大きいとアナリストたちは見ている。高額なUnix製品が敬遠されつつあるためだ。

 不安材料はまだある。J.P. MorganのBill Shopeやその他のアナリストは、IT景気が回復すれば顧客はさらにSunのUnixサーバから安価なLinuxシステムへの移行を進めるだろうと見ている。ようやく投資に回す資金を得た企業は、投資効果を最大限に高めようとするからだ。これは値頃感のあるLinuxベースのIntelサーバやMicrosoftのWindowsシステムが、企業にとってより魅力的な選択肢になることを意味する。

 Sunは対抗措置として、ビジネスインテリジェンスソフトウェアや企業情報ポータルに力を入れ、サーバ製品の売り上げを促進しようとしている。

 たとえば、サーバソフトウェアのJava Enterprise Systemを補完するものとして、SunはStarOfficeやその他のソフトウェアからなるデスクトップ環境、Java Desktop Systemを発表した。この分野で最大の市場シェアを持つMicrosoft Officeに対抗するために、同製品の年間使用料はコンピュータ1台あたり100ドル、もしくは従業員1人あたり50ドルと設定されている。

 一見したところSunのN1構想は、IT業界の2大トレンド、つまりシステム統合を容易にするWebサービスと、導入コストを軽減するユーティリティ(オンデマンド)コンピューティングを基盤にしている点で、ゆるぎのない未来を約束しているように思える。

 McNealyとSunの課題は、この構想を現実のものとすることだ。

 RedMonkのO'Gradyはいう。「少なくともソフトウェアの面では、Sunは着実に前進している。成功に必要な行動もとっている。Sunがこの計画を遂行できるかどうかはわからないが、われわれが調査した限り、顧客はSunの挑戦に関心を持っているようだ」

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