松下電器産業は30日、モバイル機器に向けた3次元音響再生技術を開発、11月より同技術搭載の製品を発売すると発表した。「この技術により、ノートPCやポータブルオーディオなどのモバイルデバイスでも、音響スタジオやホールのような広がりのある自然な再生音を得ることができる」と、松下電器産業AVコア技術開発センター音響グループ音響第二チームのチームリーダーである寺井賢一氏はいう。
今回開発された技術は、音響スタジオやホールにおけるあらゆる方向の反射音に対応した音響特性を分析し、その場にいるような自然な臨場感と音質が得られるというもの。従来はダミーヘッドや実際の人の耳を用いて測定していた音響特性を、人体頭部形状の高精度モデリングや、音源からの影響を境界面上で計算する境界要素法と呼ばれる数値計算の手法を利用して計測、反射音などのデータ量を4分の1までに減らすことで省電力を実現した。
これまでにも同社では、3次元音響再生を実現させるVSS技術などを開発、車載用やDVD機器などに組み込んできたが、「モバイル機器
松下電器産業AVコア技術開発センター音響グループ音響第二チーム チームリーダー、寺井賢一氏
会場では実際の音響を体験するため、デモコーナーが設けられていた。この技術は、再生の際にソフトウェアを使って音の立体感を実現しているため、再生デバイスであるスピーカーやハードウェア自体は通常のものと変わらない。それでも、その市販されているものと同じスピーカーやヘッドホンから聞こえてくる音は、自分が小さな会議室にいることを忘れさせてくれるような広がりのある自然な音質であった。ただしこの技術は、スピーカー独自の特性を矯正するものではないという。つまり、ノートPCに搭載されたスピーカーなどで元々重低音などの出力が弱い場合、その特性を補充することはできない。
今年11月に同社は、PCオーディオソフト「SD-Jukebox Ver4.0」にこの技術を搭載する予定。また今後は、ポータブルオーディオ機器や携帯端末機器にも同技術を搭載していく予定だという。
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