NEC vs.富士通、株価上昇に差がついたのはなぜ?

 NECの株価が快進撃を続け、9月3日には年初来高値の951円をつけた。これは年初来安値333円(4月14日)に比べて2.8倍の高水準だ。一方、富士通の株価は、年初来安値300円(4月14日)から年初来高値670円(7月8日)へと2.2倍の上昇に止まっている。さらに、NECの株価が4月以降ほぼ一貫して上昇し続けているのに比べ、富士通の株価は8月上旬には一度400円台にまで落ち込み、現在も7月の年初来高値を更新できていない。この両社の株価上昇に差が広がった背景について検証した。

 NECの株価が上昇の兆しをみせはじめたのは5月下旬からだが、上昇に加速がついてきたのは6月末からのこと。ちょうどこの時期に、7月24日に東証1部に新規上場したシステムLSIを製造・販売する子会社の半導体メーカー、NECエレクトロニクスの公開価格が4200円と決まった。この子会社の上場で、NECは公募・売り出しにより約418億円の資金を得ることが明らかになった。

 さらに7月24日の同社上場日には、初値が公開価格の4200円を27%も上回る5350円となり、その後も同社の株価は9月1日に8100円となるなど、短期間に公開価格のほぼ2倍水準にまで駆け上がる急上昇をみせた。このことから、NECの保有する株式含み益を改めて評価する見方も浮上、NEC自体の株価を上昇させることにつながった。これにさらに拍車を掛けるように、NEC系ソフト開発会社のNECシステムテクノロジーが9月12日に東証1部市場に新規上場し、公開価格の4000円に対して77%も上回る7100円と、破格とも思える高人気での初値形成となったこともNECにとっては強烈な追い風となっているようだ。

 もちろん、NECの株価上昇の背景は子会社の株式上場による恩恵ばかりではない。同社は足元の業績も順調な推移をみせており、第1四半期(4〜6月)の連結営業損益が120億円の黒字(前年同期は70億円の赤字)と当初計画を上回る好調な滑り出しとなっている。また、前年同期に比べてエレクトロデバイス事業が営業利益ベースで大きく黒字転換し、ネットワークソリューション事業での利益幅が拡大している。さらに、資材費削減や生産革新による原価低減を実現したことも株価上昇に寄与しているようだ。しかし、900円を上回る現在の株価は連結予想PERから見ても50倍と、かなり割高水準となっていることも確か。したがって今後の株価については、波乱の展開も覚悟しておかなければならない。

 一方、富士通の第1四半期(4〜6月)の連結決算は、営業赤字が378億円となり、前年同期の290億円の赤字に比べさらに拡大した。これは当初から予想された数値だが、東北地方で5月に起きた地震による半導体の一時生産停止の影響だけではなく、ソフト・サービス事業などでの回復の遅れが目立った。米国各付け会社のStandard & Poor’sは8月24日に、富士通の長期格付けについて、従来の「BBBマイナス」から「BBプラス」へと1段階引き下げたと発表した。引き下げの理由についてStandard & Poor’sは、今期の第1四半期(4〜6月)までの業績で判断すると、ハード(機器)部門の回復が遅れているうえ、ソフト・サービス部門の収益にも不透明感が出ていることを指摘して「過去数年、事業構造改革に取り組んできたものの、主力事業の競争力回復に至っていない」としている。

 ただ、富士通もここにきて、英国政府から大型の電子政府システムを約1700億円で受注するなど、従来から強みを持つITソリューション事業の優位性を生かしたプラス面もようやく表面化してきている。今後、自動車業界向けなど製造業向けITソリューション事業の下期の展開次第では、NECの株価を追撃する可能性も十分といえそうだ。

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