大手情報ソフト会社の株価急騰:金融機関の情報化投資回復は本物か

 日立ソフトウェアエンジニアリングの株価が9月に入って急騰をみせている。8月最終営業日の29日終値で3150円だった株価が、先週末5日には一時3830円まで買い進まれるなどわずか1週間で20%もの上昇率となった。この背景には、金融機関の情報化投資回復のシナリオがあるという。

 日立ソフトが連日の年初来高値更新となったほか、トランスコスモス、富士ソフトABC、日本システムディベロップメント、野村総合研究所、NECソフト、NTTデータ、日立情報システムズなどソフト・情報サービスセクターに高値更新銘柄が続出している。大手システムインテグレータ(SI)を中心に、今春以来の株価上昇局面を迎えているのだ。

 準大手証券の投資情報部では「金融機関の業況改善による年度後半のIT投資回復と、e-Japan IIによる官公庁、地方自治体からの受注増が買い手掛かりとなっているのをはじめ、ソフトバンクのここにきての活況も情報ソフトセクターに対する投資マインドを改善させているようだ。物色が広がりをみせる中で今後注目できるのは、金融機関向けの落ち込みで、苦戦していた準大手クラスのSIとの見方もある」と分析している。

 経済産業省のまとめた「特定サービス産業動態統計速報」によると、2003年6月の情報サービス業の売上高は前年同期比5.2%と、昨年12月以来6カ月ぶりの増加に転じた。さらにそれを事業別でみると、主力の「受注ソフトウェア」は製造業、金融業向けなどの増加により同4.0%と10カ月ぶりにプラスに転じ、内訳の「システムインテグレーション」が同6.3%の増加。また、「システム等管理運営受託」は製造業、金融業向けなどの増加により、同14.8%の増加となった。

 また、6月時点調査の日銀短観でも、金融機関の設備投資のなかではIT投資が回復する見通しとなっている。これは、景気の上向き傾向や株価の上昇に伴って金融機関の収益環境が改善に向かい、設備投資意欲が高まりつつあることに加え、来年4月からの新紙幣発行への対応などソフト面での投資拡大も見込めるためだ。

 例えば日立ソフトの場合、前3月期は銀行向けの落ち込みの影響を受けて4%の小幅ながら連結経常減益を強いられた。しかし、金融機関向けのソフト開発事業に明るい兆しが見えはじめていることから、今下期から来期にかけては増益基調に復帰することになりそうだ。

 外国証券のアナリストは「5月下旬あたりからスタートした今回のIT関連銘柄物色のなかで、情報ソフト関連銘柄はほかのセクターに比べてかなり出遅れが際立っていた。そこに、株価全般の上昇などによる金融機関の業績改善傾向と設備投資の回復見通しというダブルの好材料が浮上して、株価が急上昇している。ただし、短期間での急騰だけに、投資戦略では押し目買い(※)スタンスが有効といえそうだ」としている。

※ 押し目買い: 株価が上昇傾向にある中、一時的に下落する際に買い付けを行うこと。

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