フロリダ州のタンパ警察は今週、物議を醸した顔認識システムがこれまで1人の犯罪者の逮捕にも役立たなかったとして、同システムを廃止した。
このシステムは、群集の中の複数の人間の顔をスキャンし、データベース内の犯罪者の写真と照合するもので、2年前の導入以来、プライバシーや市民の自由を擁護する人々から激しい非難を浴びてきた。批判者たちは、同システムの身元確認に誤りが生じたり、あるいは市民のプライバシーが侵害されることを恐れて、これに反対していた。
タンパ警察の広報担当Bob Guidara警部は、タンパ市がシステムを廃止したのは犯罪撲滅に役立たなかったからで、プライバシーの問題とは無関係だと語った。同警部は、「(このシステムによって)犯罪者の身元が特定できたり、警告を受けたり、あるいは逮捕できたことは一度もなかった」とし、「全く役に立たなかった」と述べた。
Guidara警部の話では、タンパ警察は有線カメラの設置を継続し、忙しい時間帯に警官が肉眼で監視し続けられるようにする。この方法で、これまで複数の犯罪者の検挙に成功したという。
タンパ市は、2年前に顔認識システムを導入し、Ybor Cityの繁華街に犯罪行為監視用のカメラを設置した際、非難の集中砲火を浴びた。批判者たちは、犯罪と無関係な人々を犯罪者と誤認しかねない不正確なソフトウェアによって、無実の人々が冤罪を被りかねないと非難した。
いっぽう、プライバシー擁護派は、一般にこのようなバイオメトリクスソフトには濫用の恐れがあり、ひいては人々の全ての行動が追跡/記録され、特定の政治グループに所属しているとの理由で、無実の人々が警察の標的にされかねない監視社会につながる恐れがある、との懸念を長年訴え続けてきた。
米国自由人権協会(ACLU)の技術/自由プログラム担当理事、Barry Steinhardtは、米国で、顔認識システムによって指名手配中の犯罪者が発見できた例は、これまで1件もないと語った。
Steinhardtは、そろそろタンパ市がシステムを廃止してもいい頃だと述べた。Steinhardtは、「安全性の観点から見て、安全性の幻想ほど悪いものはない」と述べ、さらに「これらの企業が提供しているのは、安全性の幻想だ」と語った。
タンパ警察は、顔認識技術の開発に取り組むVisionics(現Identix)の無料の試験プログラムを通じて、顔認識システムを入手した。Identixは今回のタンパ警察のソフト利用中止の決定に対して声明を発表したが、同ソフトが全く役に立たなかったという同警察の苦情に対する直接的なコメントはなかった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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