アクセンチュアは23日、同社が取り組んでいる金融業への次世代IT環境構築のアプローチ、コンポーネント・ベースド・リストラクチャリング(CBR、コンポーネントベース開発によるシステムリストラクチャリング)について説明会を行った。日本の銀行の課題は何なのか、またそれを打破すべくアクセンチュアが提供するCBRとは一体どういうものなのか。
アクセンチュア金融サービス業本部総括パートナーの関戸亮司氏は、CBR自体は新しい考え方ではないとしつつも、「アクセンチュアではコンサルティング会社として、システム部分のみならず、組織の成長モデルや能力を分析し、それをうまくCBRに統合させサービスを提供する」と語る。
同氏は現在の邦銀の状態について、合併・統合が相次いだことでシステム投資が膨れ上がり、その後遺症のため今後大規模な新規投資が困難であることを指摘。また、これら銀行がどの能力を高め、どの部分を切り捨てるかといった分類ができていなこと、個別の顧客に対するパーソナライゼーションができていないことが課題だと語る。
アクセンチュア金融サービス業本部総括パートナー、関戸亮司氏 | |
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システム面でも課題があると関戸氏はいう。それは、これまで銀行には金銭の流れを管理する勘定系システムがあり、その後に情報系システムが入ってきたが、「勘定系・情報系という概念は古いものだ。勘定系をまとめてアウトソースしている銀行は多いが、戦略的に内部でやるべき部分とアウトソースする部分が混在している。差別化のためには勘定系システムの見直しが重要だ」と語る。システム上の問題でさらに問題視されているのは、初期のレガシーシステムを構築してきたエンジニアらが2007年に定年を迎えるとされている2007年問題。「全体のシステムを把握しているエンジニアがいなくなると、大規模なシステムリストラクチャリングが困難になる」と関戸氏は語った。
そこで早急にシステム改善を進めなくてはならないわけだが、勝者となるための戦略は、「業態モデルから機能モデルへと移行していくこと」だと関戸氏。「これまではリテール銀行、ホールセール銀行、投資銀行、カード会社、保険業者といったように、業態によってカテゴリー分けされていたが、今後はスケールやスコープで勝負するフルサービス型、特定スキルで勝負するニッチ型といった機能分けがうまくできた銀行が成功する」(関戸氏)
関戸氏は、邦銀の伝統的なモデルでは効率性やテクノロジー、品揃え、販売力など、すべての分野において平均点を取ることに重点を置いてきたが、「今後は平均点以下の分野があっても、重視する部分で平均点以上を取るモデルに向かうべき」としている。たとえばシステムや事務処理を他銀行に販売している英Royal Bank of Scotlandや、自行・他行の商品を一括して顧客にサービスを提供している米Wells Fargoなどは、どれも業績を伸ばしている勝ち組モデルだ。アクセンチュアでは数多くの項目から金融機関の能力を判断し、目指すべきポートフォリオを作成するという。
このようにサービス領域を個別の銀行にあわせて決定したところで、独自のアプリケーションに実装していくわけだが、その際にアプリケーションごとに内製すべきなのか、パッケージを活用すべきなのか、アウトソーシングすべきなのかを戦略的に考える---これがアクセンチュアの提供するCBRだ。しかし関戸氏が今回の説明で述べているように、邦銀がどこまで新規投資に積極的になれるのかは現在未知数である。「業務改革を任せてもらえれば、その分コストが下がる。そのコストカットできた部分を新サービスにあててもらうなど、地道な販売努力は覚悟している」と関戸氏は語った。
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