ITバブル崩壊相場の象徴、「悪役富士通」の逆襲

 6月30日、富士通の株価は前日比30円高と急伸し、492円と年初来高値を更新した。株式市場関係者の間でITバブル崩壊相場の悪役の象徴とされてきた富士通が、ここにきて株価面で逆襲を始めた背景にはいったい何があるのか。

 準大手証券のIT担当アナリストは「ここにきて、富士通に限らずITバブル崩壊によって株価が極端に下落した“悪役銘柄”において、株価面での復権のきざしが際立ってきている。ITバブル相場のなかで、株価が急騰してその後大暴落した光ファイバ関連の象徴的な銘柄として、富士通と並んで取りざたされてきた古河電工、日本板硝子の株価も急反発している。さらに、ITバブル相場の最大の象徴銘柄であるソフトバンクの株価も反騰が加速してきた」としている。

 確かに古河電工の株価は、ITバブル相場最盛期の2000年10月に上場来高値の3710円をつけていたが、今年4月28日には210円までの下落を記録していた。それが先週に入ってようやく反転のきざしをみせはじめ、6月27日には396円まで上昇している。同様に日本板硝子の株価も、2000年8月につけた高値1998円から下落して、長期間200円台前半で低迷していたのがここにきて急騰し、6月27日には373円まで買い進まれている。

 このように、出遅れていたIT関連の反騰について外国証券のストラテジストは「6月に入って外国人投資家が日本株を積極的に買いはじめたことが背景にある」としている。その外国人買いの原動力となっているのが、米ナスダック相場の上昇だ。これに伴い、「国際ポートフォリオのなかで割安に放置されてきた日本のIT関連銘柄を買い増す動きも表面化してきた。さらに、通貨リスクの面から米国投資家がこれ以上のユーロ圏への投資に対する警戒感を強め、日本株へ資金をシフトしていることも支援材料となっているようだ」としている。また、SARSに対する警戒感から中国・香港に向かうべき資金も日本に流入してきたとの説もある。

 さらに富士通固有の好材料としては、6月24日に同社が米通信大手のVerizon Communicationsから次世代の光伝送システムを受注したと発表したことがあげられる。富士通は今後3〜5年で受注総額約1000億円を見込んでおり、ITバブル以降の受注額としては最大規模となる。この受注について市場関係者の多くは「同社の業績面での最悪期はすでに前期で終わったことの証左といえる。ここにきてようやく株価は底を打った感じだ」などポジティブな見方をしている。

 さらに富士通は、保有している関連会社ファナックの株式1100万株を約554億円で売却して有利子負債圧縮を積極推進するなど、経営姿勢に対する評価も徐々に出てきているようだ。ただ、同社の株価はここにきて短期間に急騰しているだけに、今後一本調子で上昇するかどうかは判断しにくいといえる。

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