矢野経済研究所は6月2日、IP電話市場の調査結果を発表した。それによると、個人向けIP電話サービス加入件数は、2002年末で前年比約2.1倍の308万5000回線となった。
2002年に市場を牽引したのはYahoo! BB。同サービスでは、街頭PRや低価格戦略とも相まって月20万人のADSL加入者を得るなど、IP電話サービスがADSL加入者獲得の目玉商品になっているという。
業界全体では、今後提携ISPによる相互接続の推進、中小ISPのIP電話サービスの開始、ブロードバンドユーザの順調な増加といった条件が整えば、加入件数は2003年末には532万7000回線、2007年末には2788万1000回線になる見通し。
ただしISPにとって、個人向けIP電話は業者間の接続料金の上昇や、設備投資の割に利益の上がらないサービスで、今後もブロードバンドサービスにおけるメールアドレス提供と同様の位置付けに留まるという。
IP電話システムの導入法人の数は2002年末で前年比約2.2倍の1万100法人となった。2001年末から大幅に増加したのは、サービス参入企業の増加や、ユーザ企業のIP-PBXへの移行が進んだたため。法人数は2003年末には最大1万1980法人、2007年末には2万1550法人になる見通しである。
ユーザ企業は今後レガシーなシステムから、VoIP Gatewayタイプ、またはIP-PBXへと徐々に移行するという。しかし、ユーザ企業の実績不足による不安や電話性能の不足、ベンダ側のスキル不足などから、短期間での普及には至らないという予測である。
IP電話関連機器の市場規模は、2002年末で前年比約1.3倍の388億7000万円となった。2002年末まではVoIP Gateway装置が中心だったが、今後はIP-PBXやIP電話機が市場を牽引する。市場は2003年末は最大509億8000万円規模、2007年末には1280億円規模になる見通し。
この市場の問題点として、従来のレガシー・システムの置き換えビジネスが中心となっている点が挙げられると同研究所では指摘する。「各種アプリケーションとの連動や、通信システムを含めたインテグレートを行わなければ、価格競争に陥る」(同研究所)
注目される無線(携帯)IP電話については、050電話番号の割当による着信通話が可能となり、現状の携帯電話と競合する可能性もあるが、技術的課題や利便性の問題を抱えており、商用サービス開始には時間がかかるとする。
なおこの調査は矢野経済研究所が、2002年12月〜2003年3月の期間、サービスベンダ7社/機器ベンダ5社/一般コンシューマ545人を対象に行ったものである。
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