海外企業へのアウトソーシングを仲介する米NeoITは、長引く景気低迷の中で好調な事業成績を上げている。同社は昨年、2億5000万ドル以上に相当するアウトソーシング契約を成立させた。また、今年1月〜3月に手がけた契約の規模は3億ドル以上にのぼる。
米国の企業は以前から、コスト削減のために事業の一部を外部に委託してきた。この傾向は特に製造業で顕著だが、ハイテク業界でもアプリケーション開発などの分野でアウトソーシングが増えている。また、最近では、コールセンター業務を海外に移す企業が増えてきた。
米国企業が海外に目を向ける理由は、人件費の安さにある。たとえば、中国の初級レベルのプログラマの人件費は東京やロンドン、シカゴの人件費の30〜50%だ。米Forrester Researchの調査によると、海外に移管したコンピュータ職は2000年には2万7171人分だったが、2015年までには47万2632人分に増えると予測している。同社はまた、コールセンターの業務やバックオフィスの会計といった分野のサービスも、海外委託する企業が増えるとみている。
しかし、海外企業へのアウトソーシングには不安がつきまとう。金額は適切か、委託先企業の知名度は高いのか、仕事の品質が落ちることはないか、など懸念材 料は多い。NeoITや米TPIはこの点に目を付け、米J.P. Morgan Chaseや米Procter & Gamble、米General Motorsなどの顧客のために海外アウトソーシング契約の手はずを整える。
TPIはもともと、国内での業務委託を手掛けてきた企業だが、「ここ数カ月で海外アウトソーシングに感心を抱く顧客企業が激増している」(TPI)という。同社では、海外アウトソーシング契約の割合が3月の44%から4月には52%に増えた。また、2002年の同社の売上高は前年比38%増の5800万ドルに増加した。今年の売上高はこれより15〜20%増加する見込みだ。
さまざまな課題も
海外アウトソーシング事業の波に乗っている企業はほかにも多い。法律事務所の米Shaw Pittmanは、アウトソーシングの意思決定に関するビジネスコンサルティングを手がけている。同社のテクノロジー部門の売上高は、3年前の約3500万ドルから約4500万ドルに増加した。
アウトソーシングに関する問題には、知的財産権の保護や地政学的安定などが含まれる。地政学上の課題には、たとえばインドとパキスタン間の戦争に際して、業務委託を受けた企業のデータバックアップ計画などがある。
その他の課題として、委託先として適切な企業と、新参者の企業を見分ける目を持つことも挙げられる。たとえば、コンサルティング企業の米Everest Groupは、現地の委託先企業の調査のため、今年だけでもすでに3回もインドを訪れたという。「われわれはどんな企業があるか、どんな製品を提供しているか、どの企業が本物でどれが本物ではないかなど、十分にリサーチを行っている」(Everest社長のMike Atwood)
アウトソーシング事業が好況であっても、コンサルティング企業が直面している問題は数々ある。まず、整理合併により企業間の格差は縮んでいるため、どの企業が委託先として優れているか選出することが困難となっている。次に、SARSによって海外渡航が妨げられるなど、予期しないハプニングが起きる可能性もある。
さらに国内にも問題は存在する。米国労働者は海外へのアウトソーシングに対して激しく反発している。シアトルを拠点としたハイテク労働者団体のWashTechは、米国議会に海外アウトソーシングに関する調査を要請した。また、ニュージャージー州は、州の一部の業務契約について、米国市民か合法的な居住者のみを対象とする法案を可決した。
TPIのMcGuireは、このまま海外アウトソーシングの傾向が続けば、「米国内にいったいどんな業務が残るだろうか」と懸念する。McGuireは、今後半年から1年以内に、米国内の失業者問題について議論が巻き起こると予測しており、「企業は従業員や世間に対して、自社の計画をきちんと説明する必要がある」(McGuire)と指摘した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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