米国でオンライン薬局サイトのユーザーが、電子通信プライバシー法(ECPA)違反を理由に、すでに破綻したウェブトラフィック分析会社Pharmatrakの旧経営陣を訴えていた裁判で、第1巡回区連邦控訴裁判所は9日(米国時間)、この集団訴訟の継続を認める判決を下した。
この裁判の背景は以下の通りだ。
まずウェブサイトを運営する薬局数社が、サービス向上を図るため、各サイトの利用状況のデータ収集をPharmatrakに依頼した。ところがPharmatrakは、依頼内容を逸脱した上に薬局側の許可も得ずに、入力された検索キーワードなどのデータを密かに収集した、との疑いが浮上した。
このサイトを利用したユーザーの一団は、Pharmatrakがユーザーの同意なしに情報を収集したとして、2000年8月に同社を相手取り提訴したが、下級裁判所判事は裁判の継続を認めなかった。
控訴裁判所は9日の判決の中で、集団訴訟の継続を拒否した下級裁の判断は誤りだったと指摘し、事件をマサチューセッツ地方裁判所に差し戻した。
今回の判決は、議論が錯綜するインターネット上でのデータ収集問題の解決を控訴裁判所が試みた、という点で意義がある。この議論の中には、インターネットの世界では、一般に捜査当局が用いる通信傍受の様々な目的に関して、「通信の内容」として保護されるものには何が含まれるのか、といった問題も含まれている。
連邦通信傍受法では、通信の内容(電話での会話など)は、内容以外の情報(ダイヤルした電話番号など)よりもより厳格に保護されている。インターネットの世界でも、電子メールの「件名」や「内容」の方が、「宛先」や「送信者」よりも手厚く保護されている。しかしURL検索文字列といったいくつかのデジタル情報の扱いについては見解が分かれており、複数の裁判所で明確化を急いでいる。
今回の裁判では、控訴裁判所はURL検索文字列を保護の対象となる「内容」に当たると認定した。URL検索文字列は、ユーザーが検索語入力欄に検索語を入力し、検索語と一致する検索結果を表示するページに移動すると、URLの一部として表示されることがしばしばある。例えば、ある人がGoogleなどの検索サイトで「dogs」と「Labradors」という単語を入力すると、検索結果のページのURLにこの2つの単語も含まれる。そのため、このURLさえ見れば検索者が何を検索したかが分かってしまう。
今回の判決は、同時多発テロをきっかけに捜査当局の権限を拡大する目的で制定された「愛国者法」などの法で、警察をはじめとする国家権力による検索語収集の権限が拡大されることを恐れているプライバシー擁護者たちにも追い風となりそうだ。
保護の対象とされた通信の内容に、URLの検索文字列が含まれると今回の判決で示されたことで、今後捜査当局がインターネット上で行われた検索についての情報を収集する際には、今まで以上に高いハードルをクリアしなければならなくなる、とジョージ・ワシントン大学ロースクールの助教授Orrin Kerrは語る。
「まさにプライバシー重視の判決といえる。今後裁判所は保護の対象となる内容を広く認定していくだろう。これは大変意義あることだ」(Kerr)
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果