電子部品業界を直撃するSARS禍

 中国を中心としたアジア地域で一段と広がりをみせるSARS(重症急性呼吸器症候群)が日本の産業界にも暗い影を落とし始めている。そのなかでも大きな影響を受けそうなのが、ここ数年生産拠点や消費地として中国への進出を加速させてきた電子部品業界だ。

 SARSの感染者数は5月に入ってからも衰える気配をみせず、死亡者も増加の一途をたどっている。なかでも中国では初動期の対応の遅れもあり、北京を中心に患者が増加、感染者数は4000人を超え、死亡者も200人を突破しようとしている。

 こうしてSARS禍が長期化するなか、現在世界で唯一の成長セクターとされている中国の経済活動の急速な失速によって世界経済の受ける影響が重大な問題として懸念されつつある。中国はすでに、今年のパソコン生産シェアで30〜40%のシェアを占めるとの予測が打ち出されるほどIT関連機器や家電製品の一大生産基地となっている。また同時に、ここ数年の目覚しい経済成長を背景とした所得水準の上昇で、こうしたIT関連機器や家電製品の消費地としても大きくクローズアップされているのだ。

 なかでも日本のIT関連産業は国際競争力を高めるために、低廉で優秀な労働力と高い技術水準を求め、先を争って生産拠点を中国に展開してきた。SARSの影響で、すでに松下電器産業が中国での現地生産工場の生産ラインを一時停止するなど具体的な動きも出始めている。そうしたなかでも、最も打撃を受けそうなのが電子部品業界なのだ。

 日本を代表するTDK、ミツミ、三協精機、ローム、日本電産、太陽誘電といった電子部品メーカーの地域別売上高を見ると、すでにアジア向けが30%をはるかに上回っている。こうした中国を中心とするアジアのIT関連機器の生産基地が長期間にわたって稼働停止に追い込まれた場合、業績に対する影響は計り知れないものとなる。

 また、中国の5月上旬の大型連休期間における北京市内の大手百貨店売上高は、SARS禍の影響で極端な人出の少なさと購買意欲の減少を招く結果となり、例年の20%程度と低水準に落ち込んでいるという。今後も景気の先行きに対する不安感が増幅するなかで、節約マインドはかなり長期間継続すると予想されており、心理的に不況の悪循環に陥る懸念も強まっている。

 6日に与党3党の緊急経済対策が打ち出されるなど、ここにきてようやく政府や与党の株価低迷に対する関心が高まってきたことから、市場関係者の一部には株価の反転上昇への期待感も浮上してきている。しかし、SARS禍による電子部品業界の業績失速懸念など不安材料は払拭されておらず株式相場の先行きは依然として不透明感が強いと言わざるを得ない。

筆者プロフィール
超眼
某新聞社の現役経済ジャーナリスト。株式、債券、外国為替をはじめとする金融マーケットや、各産業界への幅広い取材経験に基づき、鋭い視点で分析を展開する。CNET Japan他、新聞、雑誌などに連載多数。

「株価の真相」は毎週火曜日の更新予定です。

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