PCの未来の姿とは?

 1980年代後半、世界のニュースを24時間即時に伝えるCNNは地球を狭くした。さらにウェブの発達で私たちは、北朝鮮の核施設をめぐる危機から香港でのSARSの勃発にいたるまで遠くの出来事を身近に感じるようになり、世界がさらに狭くなったことを実感している。

 ハイテク業界のビジョナリー、Mark Andersonは、グローバルコンピュータという概念を唱えている。これは、世界中すべてのトランジスタがインターネットの双方向のパイプを通してつながっているという概念である。このビジョンはすでに解明されたとする人もいるが、現実にはその表層をかすめているにすぎない。

 パーソナルコンピュータの第一世代が個人の生産性を重視したように、インターネット第一世代の主柱は電子出版や取引、さらに電子メールに使われる中央集中型のウェブサイトで成り立っていた。これはおおむねうまく行っているが、個人レベルでは情報の多さに圧倒されている人が多い。みなメールやウェブに縛られ、情報の洪水におぼれて、人間メッセージ処理マシンに成り果てた気分になっている。

 不幸なことに、頼みの綱となるツールは私たちのニーズに合ったものとはいえない。現在使われているソフトウェアは、実質的に今とは異なった時代背景のもとで開発されたものだ。電子メールが考案された30年前には、コンピュータウイルスやスパム、メールの洪水等の問題は予想できなかった。その時代にオンライン上で書類やプレゼンテーションを扱い、メール、インスタントメッセージ、ウェブサイト、Blogなどを日常的に処理するといった生活を想像するのは困難だったのだ。

 まもなく私たちは、1人1人が何百、何千、何万といった数の情報を常に吸収し、調整していかなければならない事態に直面するだろう。社会、経済、組織、個人が複雑に相互依存する世界の到来は、もはや避けられない。このような連鎖しつつある世界に応じてシステムや技術が進化しない限り、私たちは新たな現実に適応できなくなる。この間じかに迫った変革はどのような様相を呈するのか。ここにその例をあげてみよう。

 まず個人の生産性を高めるツールが、紙のみの世界に取って代わり、オンライン向けにデザインされた共同生産性を高めるツールとなるだろう。文書作成、メディアマネージメント、プレゼンテーション、買い物が全てオンラインでできるようになり、日常生活の中心となる。

 パーソナルコンピュータのOSが変化し、市販のソフトウェアやファイル、ディスクを管理するものではなく、インターネット上の信頼性に問題があるとされるソフトウェアを安全に搭載・運用することに重点をおくシステムとなるだろう。この新しいシステムは、マルチメディアプレゼンテーション、インタラクション、ストーレッジといった多様な動作を円滑に処理するだろう。

 OSと生産性との間に、第3の層が誕生するだろう。この層を、個人の持つすべてのコンピュータと同僚のコンピュータがリンクしたバーチャルな作業スペースと考えてみてほしい。作業スペースという言葉は、現在のフォルダと同じくらい一般的な言葉となるだろう。しかしこの作業スペースは、ただのファイルの入れ物にとどまらず、ある業務に適した人や情報、ツールなどを結集する柔軟な器となる。たいていの業務は複数の人間とコンピュータが必要となるので、今使われているOSの概念の多くはこの層に移行する。

 このような変化を総括すると、パーソナルコンピュータはインターパーソナルコンピュータへと変容していくと考えられる。つまり、個人のコンピュータから個人間をつなぐコンピュータになるということだ。インターパーソナルコンピュータは、オンラインで各人が共同作業者とどのように仕事をするかに的を絞り、自動同期化が可能な互換性のあるデバイスである。

 劇的に増加する情報の流れやオンラインでのやりとりに対応するため、システムやツールには新しいデザインや使用パターンが導入されることになるだろう。

・現在ほとんどの人は、インターネットから情報をとるためにブラウザを使い、最新の情報を確認するためにウェブサイトをチェックする。将来は、インターネット上で情報を提供したりオンライン取引を行う業者のほぼすべてが、ニュースやメッセージなどの幅広い情報をスタンダードプロトコルで提供することになる。高度な購読集約サービスが、プログラムされた基準に従って着信情報を自動的にふるいわけ、優先順位をつける。

・ユーザーは多様なデスクトップやサーバベースのツールを使い分けることで、情報を運用したり位置づけしたりすることができるようになる。自分の都合に合わせて、ある情報は携帯電話へ、その他の情報はPDAやデスクトップコンピュータへと送ることが可能となるだろう。着信後自動的に処理される情報もあれば、1日単位や週単位で集積される情報もある。

・一定数の参加者が共同で取り組む必要のある仕事を通知すれば、そのためのバーチャルな作業スペースを設定することができる。この作業スペースを通して、必要とされる情報を持った人々とその交信に適したソフトウェアのツールが即座に、そして安全に集められる。

・作業スペースの参加者は、仕事を完成させるにあたってかたちにこだわらずやりとりができる。参加者、情報、ツールなどを必要に応じて新たに加えたり、入れ替えたりすることが可能だ。仕事のやり方は、必要に応じて変化する。

・仕事の進行状況はオンラインでデータベースやシステムに集約され、経過や結果が公表されるので、直接作業に関わりのない人もその成果をチェックすることができる。もちろん、作業ワークスペースから結果のみ知らせてもらうことも可能で、その場合も同じようなやり取りが発生する。

 生産性を上げるツールとしてのパーソナルコンピュータは、メールやウェブ等、現在かなり洗練された使い方をされているようにみえるが、私たちはまだこのツールの恩恵を享受し始めたばかりである。これからの10年間に世の中は個人の生産性重視の時代から、共同生産性に重きを置いた、社会的ソフトウェアの時代へと確実に移行するだろう。それは硬く連結したシステムから、ゆるやかにつながりあった関係へと移行していくことを意味する。技術の進化が組織や経済、社会、そして個人生活の新局面を切り開く、高度に相互依存したシステムと関係性の高い時代となる。

 多くの人々が技術産業界全般、特にシリコンバレーの状況を嘆いている時勢に、このような可能性をこれまで眼にしたことはなかった。これからの10年、私たち1人1人が技術者として、そしてゆるやかにつながり合った小さな声の主として、ビジネスだけではなく、人々の本質的なあり方に影響を与える機会を手にしているのである。

筆者略歴
Ray Ozzie
Groove NetworksのCEOで、Lotus Notesの作成者。彼個人のBlogサイトにて執筆活動を続けている。

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