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ブラウザ誕生から10年――ネットの現在・過去・未来 - (page 2)

Paul Festa、CNET Japan編集部2003年04月28日 10時00分
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 Microsoftはブラウザ戦争では勝利を収めたかもしれない。しかし最近ではこれに挑戦しようという企業が急増しており、同社のソフトウェア帝国が平和を勝ち取るには時間がかかりそうだ。

 いまやどこにでもあるInternet Explorer(IE)だが、これにかわるソフトウェア開発が進む背景には次のような2つの理由がある。第一に、携帯電話や携帯型インターネット機器など小型ハードウェア用マイクロブラウザの存在だ。Microsoftはデスクトップ用のブラウザ市場では圧倒的な強さを維持しているが、マイクロブラウザ市場ではそれができずにいる。第二に、カスタマイズできる上にさらに拡大した機能をもつ新しいオープンソースブラウザが開発される可能性があることだ。Apple Computerが今年発表したSafariはその中のひとつである。

 小型ネットワークデバイス用のブラウザは90年代、高い期待を集めつつも期待はずれで終わっていたのだが、市場が成熟し攻守両陣営の努力がやっと報われるようになってきたと言う人は多い。現在の小型ブラウザ市場では、MicrosoftやノルウェーのブラウザメーカーであるOpera Softwareといったトップメーカーのみならず、Access、InterNiche Technologies、Fusion、NexGen Software、NetClue、Openwave、QNXなど、多数の企業がしのぎを削っている。

 「長い間、携帯電話やPDAには市場性がなかった」とJupiterのアナリストMichael Gartenbergは言う。「しかし今は、ネットワーク接続や性能、そしてスクリーンサイズの点においても十分な機能を持つ携帯電話やデバイスが出てきた。ただ、17インチのモニター用にデザインされたコンテンツを、切手サイズのモニターで操作できるようにする技術はまだ完成していない」

 このような技術的課題があることは、小規模メーカーにも市場参入のチャンスがあることを意味する。Microsoftは長期に渡り訴訟問題を抱えており、これを理由に携帯電話メーカーが同社との提携に消極的であるのも追い風だ。オープンソースのソフトウェア開発者においては、Microsoftとの関係についてさらに後ろ向きだ。彼らの中にはNetscape Communicationsの元従業員が多く、Microsoftの攻撃的な仕事の進め方をじかに見てきたからだ。

 しかし業界アナリストらは、新しいブラウザ部門であってもMicrosoftに対抗すれば必ず手強い抵抗にあうだろうと警告する。これまでも同社は新市場に商品を投入するたびに相当強固な手段を展開してきたからだ。

 Gartenbergは、現在の携帯電話市場は分断されているという。「Microsoftには懸念材料があるので、確かにOperaにとってはチャンスだ。ただ、過去にもMicrosoftより優れた素晴らしい技術を提供する企業がたくさんあったにもかかわらず、その多くが失敗に終わっている」

 しかし世間の見方は楽観的だ。特にMicrosoftは、市場を独占するようになって以来ブラウザ技術向上の努力をほとんどしていないので、IEにかわる商品に人々は優位性を見出すようになるというのだ。「技術改革は長い間停滞していたが、過去の失敗として諦められていたもの、つまりオープンソースのMozillaのおかげで、なんとそれが復活した」と業界出身者で現在はニューヨーク大学でニューメディア学を教えるClay Shirkyはいう。

 Mozillaブラウザが書かれているソースコードは誰でも入手できる。そのため開発者がそのソフトウェアに何かを追加したり新しいアプリケーションを開発するのも自由だ。人気のある機能はメインブラウザに最終的に組み込まれるかもしれないが、Mozillaのユーザーは自由にエクステンションを追加したり開発して自分用のカスタマイズができるのだ。

 これと対照的に、MicrosoftはIEに新機能の追加を計画してはいるが、それは万人向けに統一仕様を売り込むという手法を見直すものでは全くない。コンピュータユーザーがIEに飽きてしまった理由はこのあたりにあるのだろう。

 Mozillaオープンソースプロジェクトの代表であるMitchell Bakerは、何か新しいものが生まれるときの新ツール開発スピードは非常に速いと語る。「Mozillaベースのエクステンションを開発するための土台はできあがっている。私たちがこれらオプションの内容を確認し、Blog用ツールができたけどよかったら使ってみて、といったことを主なユーザーに伝えることもできるようになっている」

 Mozilla関連のものだけでも、進行中のプロジェクト数は過剰だ。WindowsブラウザのK-Meleon、GNOME(GNU Network Object Model Environment)ブラウザのGaleonやEpiphany、そしてAppMacが最近発表した3つのMacintosh用ブラウザなどがその例である。かつてはChimeraとして知られていたCamino、そして小型版Windows用ブラウザのPhoenixなどもある。

 Mozillaという名前は、「Mosaic」と日本映画での凶暴な怪物「ゴジラ」を組み合わせたもので、同プロジェクトはMicrosoftがマーケットシェアを急激に伸ばし始め、Netscapeや他の競合メーカーがニッチなブラウザ市場へ逃げ込もうとする過程で生まれた。またSpyglassはMicrosoftのIEへMosaicのブラウザコードをライセンスしているNational Center for Supercomputing Applicationsから分社した企業だが、同社は携帯電話やPDAなど小型ネットワークデバイス用ブラウザの開発に集中した。Opearaも同じ分野に焦点をおいた。

 Netscapeは戦略的事業分野を拡大して企業向けソフトウェア分野を含めることとし、あるオープンソース開発プロジェクトに自社のプロプリエタリなブラウザコードを公開するという改革的な動きを見せた。MozillaはMicrosoftの苦手分野とされている、デスクトップと携帯用デバイスの両方に使える小型ブラウザの開発に着手した。

 しかし、言うは易く行うは難しである。数年遅れでNetscapeはMozillaブラウザを完成させたが、未完成品という酷評を受けた。そこで開発陣は同ソフトウェアを改善したが、改善の過程で今度は「動作の軽いブラウザ開発」という当初の目標が失われてしまった。最近では、MozillaのレンダリングエンジンであるGeckoは全く軽くなく、小型デバイス向けに適さないと批評家もプロジェクトメンバーも口を揃える。

 ところでNetscapeに打撃を与えたのは、AppleがK Desktop Environment (KDE)というUnixベースのオープンソースプロジェクトのKHTMLブラウザをSafariに採用したことだ。このAppleの選択は、Microsoftがデスクトップ市場で不動の地位を築き上げていても代替ブラウザ候補はいくらでもあるという事実をも浮き彫りにしている。

 しかしIE人気に支えられるMicrosoftには、競合メーカーを慎重に出し抜くような努力はしなくても、他社の市場参入に相当のダメージを与える力がある。それは、IEや他の主流ブラウザがW3Cの決める業界標準に適合するよう大幅に改善されたにもかかわらず、実際には標準に合わない部分がかなり残されているからだ。

 IEがデスクトップ市場における絶対的シェアを占めているため、ウェブ制作者もたいていはW3Cの業界標準ではなくIE環境での作動を基準としてページを作成する。そのため競合ブラウザも、業界標準ではなくIE環境用に作られたページに合う手法を採用せざるをえない。そしてそれはコードの膨張、つまりアプリケーションを構築するコードが増加する原因になっている。

 eMarketerのアナリストRoss Rubinはあるインタビューで「Geckoは組み込みシステムへの市場参入モデルとして書かれた」と答えている。「Geckoの開発陣は、内心では通信業者やセットトップボックス業者のことを想定しており、それらの市場では理論的には互換性はさして重要ではないかもしれない。しかしこの市場ではユーザーが幅広い分野のサイトに接続できることを望んでおり、開発者は様々な種類のサイトをサポートしなくてはならない。そして彼らは、IE以外のことを考慮していないものに対応するため、様々な点を改善する必要がある」

 Rubinが言うには、KHTMLはあまり注目されていないが、Appleの開発陣がIE用のページを正確にレンダリングする技術を開発できたら、現在テスト中である同社のKHTMLベースブラウザSafariの普及が進む可能性があるとのことだ。

 たとえそれが本当でも、現在のブラウザ市場は混戦状態にあるので、どのブラウザメーカーの潜在力も低く見積もるには早すぎるという者もいる。あるフリーソフトウェア派の人物は、KHTMLやMozillaの軽量版Phoenixの市場参入がブラウザ市場の未来に光を与え、業界標準を無視する輩に市場が占拠されるのを防いでくれると語る。

 「Microsoftのような会社が提供する無数のプロプリエタリなエクステンションツールを使う代わりに、ウェブを開放し続けていたらどうなっていだだろうか。ウェブの業界標準は、もっといいものになっていたのではないか」と疑問を投げかけるのはLinuxのDebian版開発を援助したBruce Perensである。

 Perensは言う。「ブラウザ市場は病んでおり、不健全な状態にある。ほとんどのウェブページを見るのにある特定の業者が提供するブラウザが使われているなんて、それは自由市場ではない。本当の競争があるのが自由市場だ。ひとつの企業がこれほどまでに市場を独占することは、自由市場では決して許されないはずだ」

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