Webサービス発展途上

Martin LaMonica (Staff Writer, CNET News.com)2003年02月12日 14時13分

 Webサービスは、今後のソフトウェア業界の明るい兆しとなりそうだ。企業間を結ぶ架け橋としてEコマースを盛り立てている。

 Webサービスを大まかに定義すると、コンピューティングシステム間をつなぐためのプログラミングメソッドと言えるだろう。当初は電子小売業などの基盤に使われると予想されていた。

 Eコマースサイトを例にとってみると、顧客のクレジットカードのデータや出荷情報、配達時間を設定するためのスケジュールなどへアクセスする際に利用される。独自のソフトウェアを開発することなく、Webサービスを利用して保険の支払い処理をすることもできる。

 しかし実際のところ、Webサービスは予想とまったく違った、より実用的な形へと変化している。商取引をオートメーション化したり、様々な機能を提供してWebサービス市場を盛り上げるどころか、外部のインターネットにつながるためのWebサービスは、一般消費者や企業のマネージャーを対象にはしているものの、野心家のプログラマーを対象にしているケースはほとんど見られない。

 現在Webサービスは、製造年月やメーカーの異なる企業間のシステムをつなぎ、業務を統合するために不可欠なテクノロジーとして存在意義を確立している。、特に社内システムをつなぐ必要のある多くの企業は、ソフトウェアの「統合」を求めている。Webサービスは、BtoBのEビジネスにおいて企業間のシステムを連携させるための簡単な方法として捉えられている。

 企業間あるいは社内の部署間でデータをやりとりするような日常業務は、Webサービスの本来の目的であるコンシューマーアプリケーションと比べると、さほど魅力的ではない。しかし、これもビジネスの一つであることに違いはない。そして、Webサービスのテクノロジーがまだ十分に日の目を見ていないと懸念する支持者にとっては、これは喜ばしいニュースだといえる。

 Webサービスがスタートしてから4年近くになるが、ソフトウェアメーカーが望むほどのドル箱とはなっていない。投資が不足しているため、Webサービスの標準化には不十分な点が数多く残っており、計画倒れのものも多い。しかし、Webサービスはここにきて新たな勢いとなって、インターネットバブルの時期に構想されていたBtoBエクスチェンジ という言葉を復活させようとしている。

 「Google や Amazon のようなWebサービスほど魅力的なものではなく、どちらかと言えば、昔ながらの退屈な日常業務ではあるが、これこそがビジネスである」と、ZapThink のアナリスト、Jason Bloombergは述べている。

 アナリストらが言うには、これらのBtoBアプリケーションは、Webテクノロジーが市場において試されるときが来れば、ビジネスにおける価値を即座に明らかにしてくれるだろうとのことだ。

 初期のWebサービスのプロジェクトは、そのほとんどが社内システム間で情報をやりとりすることに焦点が置かれていた。これは主にXML(Extensible Markup Language)で提供されるデータが中立的なものであったためだ。コストに敏感な企業は、Webサービスでデータやアプリケーションを統合することでどの程度効果が上がるのかを見極めている。

 米調査会社Evans Data が最近提出した報告書によると、調査対象となった企業のうち80%がXMLやWSDL(Web Services Description Language )、SOAP(Simple Object Access Protocol)などのWebサービスを使用しているものの、これらのWebサービスが社内全体に効果があったと答えたのは15%に留まったという。ただし、XML がトランザクションの標準的なドキュメント形式として人気を博している一方で、BtoBコマースに投資している企業はWebサービスに大きな意味を見出している。

  Orc Consulting とFactPoint Groupが行った調査によると、初期の段階からWebサービスを取り入れた企業のうち48%もの企業がBtoBトランザクションにWebサービスを導入している。この調査結果が市場全体の状況を反映しているとは言い切れないが、統合にかかる費用を節約し、顧客とより近い関係を築くために、企業はWebサービスの導入に踏み切るようである。

  FactPoint Group のパートナー、Tim Clarkは、「これらのアプリケーションは一般的にWebサイトなどで使用するものではなく、納入業者と販売代理店のように信頼関係がある既知のパートナー向けのものだ」と述べている。「IT部門は一般的に動きが遅い。マーケティング部門などに比べ、Webサービス技術の限界をよく理解していることが理由だろう」(Clark)

 外部のパートナーとアプリケーションを連携させるだけでなく、セキュリティと信頼性を加えて社内でシステムの統合を行うためにも Webサービスは使われる。ただし、Webサービスを提供する企業の経営幹部は、EビジネスにおいてWebサービスを利用する価値は十分にあると言う。なぜなら、パートナーとオンラインで接続する際にはシステムの統合が大きな問題となり、Webサービスは理想的なバイパスとなるからだ。

 メッセージングソフトウェアを販売する Knenamea の最高技術責任者(CTO)であり、共同創設者でもあるJohn Blairは、「Webサービスをセットアップする際に起こる問題の多くは、ファイアウォールの外に隠れている」と述べている。「企業の垣根を超えてシステムを導入しようとすると、ある企業はSAPを、別の企業は WebMethodsを利用し、また別の企業は他のものを利用しているといった問題が起こるのだ。」と同氏は言っている。

 Blairは話を誇張しているわけではない。例えば、米国大学生の約90%の在学情報を提供するNational Student Clearinghouse (NSC)では、専用のEDI (electronic data interchange) ネットワークを廃止し、Webサービスを取り入れて事務処理を自動化した。

 NSCでは、在学状況や学位証明など、生徒のプロフィールに関するデータベースを管理しており、大学の教務部などは料金を払ってデータにアクセスしている。すでに数千の組織がNSCのデータベースに接続されており、Webブラウザからいつでもデータにアクセスできる環境を整えた。

 「数え切れないほど多くの末端にまでサービスを浸透させる可能性があることに気づいたものの、顧客のITスタッフに大きな負担をかけることなく、接続をセットアップできるようなソリューションが必要だった」と、NSCのマーケティングおよびビジネス開発部門のバイスプレジデントは述べている。

 Webサービスに使用されるXML文書や移行の仕組みは、EDIネットワークよりも簡単で低価格だ。しかしNSCは、セキュリティを確保し、システムへのアクセス権を与える必要があった。そのためNSCは、セキュリティやネットワーク管理サービスなどのWebサービスを提供しているアトランタのソフトウェア会社、Flamenco Networks の助力を仰いだ。

 「しっかりとしたWebサービスを実現するためには何が必要かを熟考した上でFlamencoが提供しているものを見れば、決断は実に簡単だった」と、NSCの最高情報責任者(CIO)であるDoug Falkは述べている。

 同規模のアプリケーションを提供しているWebサービス会社は他にもある。携帯電話サービスを提供しているT-Mobileは、設立したばかりのSystinetのWebサービスソフトを利用してコンテンツプロバイダ間のデータを集め、携帯電話の利用者にパーソナライズした情報を提供している。パートナー間で情報を交換する手段としてWebサービスは比較的費用もかからないため、T-Mobileはコンテンツや請求書の情報を整理し、他の国でもパーソナライズした情報を提供することが可能となった。

 XMLやSOAPなどの基本的なWebサービスプロトコルは企業間コミュニケーションを簡易化するが、ネットワークWebサービスに関しては既存のビジネスアプリケーションほどの勢いはない。個人の身元を証明する方法や、購入した製品が確実に顧客に届いていることを保証するための方法がほとんどないことなど、注目すべき問題点がいくつかある。

 これらの問題に取り組んできた企業もいくつかある。Systinet、Microsoft、IBMなどの企業が開発ツールやサーバソフトウェアを販売する一方で、AmberPointやBlue Titan Softwareなどの新興企業はWebサービスアプリケーションの堅固なセキュリティ、信頼性、管理業務を提供している。

 Webサービスは従来の接続システム用ミドルウェアやソフトウェアよりも優れていると支持する声も上がっている。Common Object Request Broker Architecture (CORBA) 標準仕様やMicrosoftのCompound Object Model (COM) プログラミングといった、以前のサーバ中心のアーキテクチャでは、ビジネスパートナー同士が常にネットワークで接続されている必要があり、両端末で同じソフトウェアを使う必要があった。

 「独自仕様のミドルウェアシステムを使用してもうまく行かないだろう。なぜなら、独自仕様とは、費用が余計にかかることを意味するからだ」と述べるのはE2open のCEO、Greg Clarkだ。E2open は、材料を売買できるBtoB取引を電子機器メーカーに提供している。E2open はWebサービスを積極的に取り入れることで、従来の統合ミドルウェアを利用したカスタムオーダーのアプリケーションに比べ、コストを10分の1以下に抑えたと同氏は述べている。

 結局Webサービスは、コスト削減のためのものなのだ。Greg Clark は次のように述べている。「我々の仕事は、企業間のプロセスを統合することであり、Webサービスは統合コストのルールを変えているのだ。」

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