EMCは、2月3日に発表予定のハイエンド製品の改良版で、ストレージ市場における競合製品とのパフォーマンスの差を巻き返す予定だ。
月曜日に発表されるSymmetrix 6の製品ラインには新しい内部アーキテクチャが導入されているが、これは市場最前線において反撃を試みるEMCの成果が期待される非常に重要なステップだと見られている。
マサチューセッツ州に本拠地を置くストレージメーカー、EMCは、前四半期において予想を上回る好業績を発表したが、これはコストの削減とミッドレンジ分野のストレージ製品ラインの販売促進によるものだとアナリストは見ている。
「1年出遅れたが、Symmetrix 6は他社の主力製品に影響を与え、EMCの業績を支える主要な製品となるだろう」と、メリルリンチ社のアナリスト、Steven Milunovichは先週の調査報告で述べている。同氏によると、昨年の第3四半期において、EMCの市場占有率は13%から11%へと落ちている。
MilunovichやEMCに詳しいアナリストによれば、Symmetrix 6が技術面において最も優れている点は、新しい「マトリックス」アーキテクチャが導入されていることで、ストレージシステムの内部コンポーネント間の情報伝達速度が向上することだ。また、キャッシュパフォーマンスも向上し、RAID-1テクノロジーから新しいRAID-5テクノロジーへの変換にも対応しているため、バックアップ目的でデータが一箇所以上に冗長的に保存されてもディスクの空き容量は少なくて済むという。
Wall Street誌のアナリストおよびEMCに詳しいアナリストの情報によれば、Symmetrix 6の製品ラインには、DMX800(モジュラー)、DMX1000(単一エンクロージャ)、DMX1000(二重エンクロージャ)の3つのモデルがある。
EMCは3日、ニューヨークにて新製品の発表を予定している。経営幹部は先週行われた業績報告会議で、新製品発表の話題があがったことは述べたが、詳しい情報について言及するのは避けた。またEMCは、当記事に詳しい情報を載せることを拒否している。
競合製品との熾烈な戦い
EMCの競合相手は新製品の発表に余裕の色を見せているものの、同社の動きには注目しており、IBMおよび日立データシステムの2社はそれぞれ競合製品ラインの強化を発表している。
日立は1月29日、オプションの146GBドライブを追加することでLightning 9900 Vの総データ容量を2倍にすることを発表しており、これによって物理容量の合計は148テラバイトとなり、使用可能容量は128テラバイトとなる。また日立では、64ファイバチャネル接続(2GB/秒)まで接続を向上すると発表している。
一方IBMは2月3日、ストレージ管理におけるソフトウェアベンダ間での共通言語として推奨されているBulefinを標準仕様としてサポートすると発表する予定だ。また、72GBの高速ハードドライブも同時に発表する。
カリフォルニア州サンノゼに拠点を置くEnterprise Storage Groupのアナリスト、Steve Kennistonは、ハイエンドなストレージ市場において「3頭の馬がレースを競い合ってる状態だ」と述べている。
Kenninstonによると、EMCが発表を予定しているシステムそのものの改良と、IBMや日立のいうドライブやプロセッサの高速化では大きな違いがある。EMCは、Symmetrix 6で新しいデータアーキテクチャを打ち出すことが期待されている。
これまでのEMCのストレージシステムではバスアーキテクチャが使用されていたが、これはデータが同じ経路を共有するため情報の停滞を引き起こす可能性がある。日立では2年前にLightningシリーズでスイッチアーキテクチャを導入しているが、EMCのプレゼンテーションによると、同社が今回発表するマトリックスアーキテクチャの導入によって1秒間に64MBの最高帯域幅を実現したとのことだ。日立はアーキテクチャに移行後も内部処理量は16GBだったが、16GBという数字は、EMCにとってバスアーキテクチャを使用した前製品、Symmetrixと同じ処理容量である。
EMCがマトリックスアーキテクチャに転換したことによって、日立の経営幹部はバスアーキテクチャの時代が終わったと見ている。
一方IBMの経営幹部は、Sharkとして知られるIBMのエンタープライズストレージシステムはEMCの新製品よりも実質上優れていると見ている。
「内部帯域幅は、アプリケーションのパフォーマンス全体のほんの一部に過ぎない」と、Shark製品ラインのマーケティングマネージャー、Jim Tuckwellは述べている。
またIBMは、EMC の新しい高速ストレージシステムをメインフレームに取り付けるためのサポートは第3四半期まで実現しないと指摘する。関係者によると、2つのハイエンドモデルに関しては、まずESCONがサポートされ、今年の後半には2GBのFICONテクノロジーをサポートする予定だというが、ローエンドのモジュラーモデルに関しては、メインフレームのサポートは予定されていない。
カスタマーの判断は?
アナリストが一番注目しているのは、EMCの新ハードウェアにアップグレードする顧客がどれだけいるかということだ。「EMCの大きなメリットとなるのは、ベースシステムがすでに設置されていることだ」と、ブローカー企業AG Edwardsのアナリスト、Sheby Seyrafiは述べており、EMCの顧客の間では、より高速なシステムを要求する声が上がっているという。
「EMCは、過去2年間で30%以上のハイエンドハードウェアのシェアをIBMと日立に奪われており、去年1年間だけで約15%のシェアを失った」と、ブローカー企業Sanford Bernsteinのアナリスト、Toni Sacconaghiは言う。
「EMCの製品は日立やIBM製品と同じような価格で、シェアもそう変わらないにも関わらず、同社がシェアを失いつつある理由は、ハードウェアのパフォーマンスで遅れをとったためだと考えざるを得ない」と、Sacconaghiは今週の研究報告に記している。
新製品というものは大抵の場合、発表後の1〜2四半期のみ業績を押し上げるに留まるが、IBMがかつて新しいメインフレームコンピュータを発表したときと同じように、Symmetrix 6はEMCの業績を3〜4四半期の間潤すだろうとMilunovichは述べている。
「Symmetrix 6が顧客に快く受け入れられると仮定すると、業績は2ケタ向上し、20億ドルに達するだろう」と、Milunovichは見ている。
しかし、EMCがNAS(Network Attached Storage)で業績の巻き返しを計る一方で、DAS(Direct Attached Storage)においては業績が落ちるだろうとMilunovichは述べる。新製品は業績向上につながると思うが収益の見込みは1〜2四半期に留まるだろうと、Sacconaghiもこれに同意している。
また、新しいSymmetrixの製品ラインがストレージ市場にどう影響を及ぼすかについては予想ができないとSeyrafiは言う。ストレージの価格は、これまでの平均が30%の下落だったのに対して、最近では毎年GBあたり40〜50%下がっている。
「EMCの新製品が市場価格安定の触発剤になるかどうか見ものだ」と、Seyrafiは述べている。
IDCによれば、ストレージ市場における総収益は、前四半期と比べ第3四半期は2%の下落と低迷中である。
EMCのCEO、Joe Tucciによると、今年は情報テクノロジー全体における支出にあまり変わりがないが、ストレージへの投資は増加が予想されるということだ。
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