ITサービスを提供している米国企業は、海外の競合企業に圧倒され、新しいマントラを掲げた。いわく、「ライバルを倒すことができないのであれば、彼らと手を組めばいい。」
ITサービス企業はこぞって、インド、中国、メキシコといった人件費が安い地域のIT技術者を利用して、より廉価で柔軟性の高いサービスを提供しようとしている。米国の企業はここ最近も海外事業の計画を発表しているが、その直近の例は米Hewlett Packard(HP)である。HPサービス部門の責任者アン・リバーモアは、先週行われた金融アナリストとの会合の席で、ITサービス業務の大部分をインドに移転する計画だと述べた。
「コンサルティングとインテグレーションの市場では、顧客が価格面で大きなプレッシャーをかけてくるだろう」とリバーモアは述べた。「海外でできることは可能な限り移すつもりだ。」
HPはすでに数千人のサービス担当社員をインドで雇用している。同社は、海外コンサルタント事業の計画について、1月に詳細を明らかにするつもりだ。
先月、コンピューターサービス業界の巨人、米Elecronic Data Systems(EDS)が『Best Shore』という名のプログラムを発表した。低コストで運営している世界各地のアプリケーションサービスセンターにおいて人材とリソースを40%増やすというのだ。現在EDSは、インドのチェンナイ、ブラジルのサンパウロ、ニュージーランドのウェリントンなど、13のBest Shore施設で4500人の従業員を抱えている。
米IBMのサービス部門によると、同社においては1年以上も前から、やはり『Best Shore』と呼ばれる戦略を展開しているという。IBMは、インド、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラ、カナダ、中国などのコストが低い国に、サービスセンターを置いている。
市場調査会社である米Gartnerのフランシス・カラモウジス(Frances Karamouzis)によると、米国のITサービス企業が海外への業務移管を進めているのは、InfosysやWiproといったインドのハイテクサービス企業の攻勢に応じるためだという。「インド企業に対抗できるサービスを提供するために米国企業が選んだ方法だ。」
ハイテク不況の中、インド企業は米国企業よりもはるかに好調な業績を収めている。過去2四半期をみると、InfosysとWiproは売上高をそれぞれを26%拡大した。一方、EDSの過去3四半期における売上高増加率はわずか4%。ITサービスプロバイダーの米コンピューター・サイエンスに至っては過去2四半期における増加率が1%にも満たない状態だ。
にもかかわらず、米国のIT支出額からインド企業が吸い出している金額の割合はわずかでしかない。カラモウジスの推定では、米国からインド企業が得る売上高は年間約60億ドル。これは米国のIT支出全体の5%にも満たない。しかし同氏は、海外移管モデルは足場を固めており、今後成長していくだろう、と予測する。
カラモウジスによると、インド企業は1990年代初頭に、旧式ソフトウエアの保守といった地道な仕事に取り組み始めたという。彼らは品質を重視することで、米国企業から信頼を得た。そして今、より重要なアプリケーションを手がけるようになった、と同氏は説明する。
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