その仕事がなぜ必要なのか?--業務に対する真の理解を深める理由

文:Ilya Bogorad (Special to TechRepublic) 翻訳校正:村上雅章・野崎裕子2011年01月25日 07時30分

 米国では今、「Undercover Boss」(アンダーカバーボス)というリアリティTV番組が人気を集めている。この番組は、大企業の幹部が身分を隠し、自社の平社員として働く様子を紹介するというものだ。幹部らは、重役室からうかがい知ることのできない、現場における日々の業務の詳細を目の当たりにすることになる。目から鱗が落ちる経験の連続というわけだ。

 ただ、この番組には不自然な部分もあり、その展開も陳腐であるため、エンターテインメント番組としての価値には疑問符がつくうえ、企業の幹部が自社の中核業務の現場を知らないという事実に驚いた視聴者もほとんどいなかったはずだ。それにしても、こういった幹部らはいったいどのようにして会社を運営しているのだろうか?企業幹部の意思決定は、業務知識に基づいたものとなっているべきではないのだろうか?

 役員室と現場の距離が天文学的な数値でしか語れないほど離れているという場合もしばしばある。顧客に接するのは現場の第一線で働く従業員であるため(ミートボールサンドイッチを注文するために、あるいは貯蓄口座の開設を行うために、企業の役員室に電話をかける人などいないはずだ)、現場の第一線から何光年も離れているといるということはすなわち、顧客から何光年も離れているということになる。

 このような視点から見た場合、マネジメントを対象とするコンサルティングサービスに対するニーズは、当分の間なくなりそうにもない。

 とは言うものの、こういった問題は企業の幹部だけが抱えているというわけではない。あなたの会社における数多くの部門も同様の問題を抱えているはずだ。ミートボールサンドイッチの広告を制作する場合、マーケティング部門はCMソングの作曲を依頼したり、テレビのCM枠を確保する前に、実際にその商品を試食してみるのだろうか?また財務部門は、自社の請求書が電子決済に対応していないせいで、顧客がどれほどの面倒を感じているのか、理解しているのだろうか?

 また、IT部門についてはどうだろうか?本記事は詰まるところ、IT部門のリーダーたちに向けたものなのである。

 IT部門はおそらく、あらゆる部門のなかでも最も日々の業務から乖離しやすいと言ってもよいだろう。そういった乖離などないという、例外的な素晴らしいプロジェクトもあるだろうが、そのようなプロジェクトでは、本記事で紹介するような知識の有無が成否を分けるものとなっていない場合がほとんどであるはずだ。ここでいう知識とは、戦略的および戦術的な意思決定が必要となるITマネジメントという作業に遍在しているものである。では、ITマネジメントという作業の本質はどこにあるのだろうか?そしてそれは重要なのだろうか?

 筆者は重要だと確信している。ITリーダーにとって、中核業務に対する真の理解を深めることは、マネジメントを行ううえで必要不可欠なのである。以下にその大きな理由を3つ挙げる。

#1:意思決定の質を向上させる

 ものごとを一般化し、単純に考えようとする人間心理は、ビジネスの世界においてより顕著に現れる。しかし、ほとんどの意思決定は複雑な過程を経て行われるものであるため、あまり重要でないと思えるものごとであっても簡単に切り捨ててはならないのだ。こういった指針は、優れた意思決定者も認めているところである。

 もしもあなたが、自社の中核業務の運用形態や、どのような人々が現場で働いているのか、どのような人々が顧客であるのか、どのようにして顧客が獲得されるのか、といった重要な性質について把握していないというのであれば、意思決定を行ううえで必要となる複雑な過程すべてをないがしろにしていることになる。

 こういった考慮は、プロジェクトのポートフォリオ管理(時期や範囲、要員、優先順位など)から、開発、手法の選択にいたるまでのあらゆる意思決定において不可欠なものとなるのだ。

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