2010年7月27日、このタイミングでは誰もが予想もしていなかったであろう「Googleの検索エンジンと検索連動型広告配信システムの採用」というリリースがヤフー(Yahoo! JAPAN)によって発表された。
2010年6月中旬には、米国におけるYahoo! Inc.とMicrosoft(Bing)による検索結果統一化のテスト開始が報じられ、世間の関心がそちらに向いた矢先の出来事であった。米国、中国に次ぐ、世界第3位のインターネットユーザー数をほこる日本に突如押し寄せた検索エンジンテクノロジーのパラダイムシフト。ウェブプロモーター達は不安と期待を感じつつ、Googleの底知れぬパワーをまざまざと思い知らされたことだろう。
今回は、Yahoo! JAPANがGoogleの検索エンジンを採用した背景について述べたい。大きく3つにまとめたが、その他のさまざまな理由や要素も存在することをあらかじめご認識いただきたい。
ヤフー株式会社の筆頭株主はYahoo! Inc.(約35%)ではなく、ソフトバンク株式会社(約39%)であり、Yahoo! JAPANはYahoo! Inc.とMicrosoftが結んだ提携の影響を受けない。言い換えると、日本における検索エンジンの選定はbingに縛られることがない。
基本的にYahoo! JAPANは、日本の市場だけをターゲットにしたビジネス展開が前提となり、日本語という極めて特異な言語のためだけに検索エンジンを開発するのは採算が合わない。現に、Yahoo! JAPANが自前で開発した検索エンジンはディレクトリ型検索エンジンのみであり、ロボット型検索エンジンは開発していない。
ちなみに、1998年5月から2001年3月まではgooを採用し、2001年4月から2004年5月まではGoogleを採用していた過去がある。
公式リリースに「Yahoo! JAPANのサイト上で、引き続きGoogleのサイト上とは違う体験をすることができると考えられます」とあるように、検索結果のスポンサードサーチとオーガニック検索結果の表示される割合を大幅に変更し、知恵袋などのヤフー独自のコンテンツを押し出す予定だ。
検索ユーザーに対してはGoogleとはまったく別の検索体験をさせることで、十分な競争力を維持することが可能と判断した、Yahoo! JAPANコンテンツへの自信が垣間見える。また、インタレストマッチ以外の広告配信システムもAdWordsが採用されるが、Yahoo! JAPANは今までと変わらない審査基準、営業体制、独自の広告配信先を保持することで、Googleのそれとはまったく別の性質のものとして運用されていく。
したがって今回の提携は、日本の検索エンジン市場から競争を排除するものではなく、日本の公正取引委員会の審判もパスしている。
最後に、今後のSEOについて方向性を考えてみたい。
Yahoo! JAPANのオーガニック検索結果の表示枠はGoogleのテクノロジーを採用するが、Yahoo! JAPAN独自コンテンツの表示枠が新設される。この新たな領域に自社サイトを表示させることこそ、Yahoo! JAPANからの来訪者増に非常に有意義に働く。今までのオーソドックスなSEO施策ではカバーしきれない“上位表示のための仕掛け”を模索することが必要だ。
公式リリースには、新生Yahoo! JAPANの検索結果のイメージが発表されているが、「Yahoo! JAPANコンテンツ連携」という枠の内容について詳細に触れられていない。どのようなコンテンツが、どのようなロジックで表示されるかは今のところ不明であるため、今後のリリースが見逃せない。
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