日本音楽著作権協会(JASRAC)など権利者91団体で推進する連合組織「Culture First」は11月10日、私的録音録画補償金制度の見直しを求める記者会見を都内で開いた。
91の権利者団体が推進する同組織は、“Culture First(はじめに文化ありき)”をスローガンに掲げ、文化を守ることを前提にした著作権制度の推進活動を続けている。このほど行われた記者会見は、補償金の不払いを理由に、私的録画補償金管理協会(SARVH)が同日東芝を提訴したのを受け、権利者団体としての見解を改めて表明するといった趣旨で開催された。
私的録音録画の補償金を巡っては、文化庁の私的録音録画小委員会で2006年から議論が続けられていたものの、メーカー側と権利者側の主張が平行線をたどったまま、いわば空中分解の状態で2009年度末をもっていったん終了。以降は文化庁が仲裁役となり、個別の交渉で調整を図るとされたものの、会見に登壇した実演家著作隣接権センター(CPRA)運営委員の椎名和夫氏によると、「メーカー側が懇談会に応じていないというのが現状」だという。
こうした状況のもと、4月には東芝、パナソニックの2社が「ダビング10で技術的に著作権保護がなされているデジタル放送専用録画機は補償金の必要がない」と主張し、SARVHに対して支払いを拒んでいることが判明。9月の支払い期限を過ぎた東芝をこのほど提訴する事態にまで発展した。
一方、著作権法を所管する文化庁は「DVDレコーダーは補償金制度の対象。現時点では、録画形式に関してはデジタルかアナログかにかかわらず対象となる」という見解を示している。そのため提訴の争点となっているデジタル放送専用のDVDレコーダーについても補償金の支払い義務があるとしている。
こうしたメーカー側の一連の解釈と行動に対して、日本映画製作者連盟事務局長の華頂尚隆氏は「文化庁がはっきりと見解を示しているのに、それを無視しても補償金を支払わないメーカーの行為は子どもじみている。法令を無視してでも自分たちの主張を押し通そうとする態度を見ていると、日本は法治国家なのかという危機感すら覚えてしまう」とコメント。また、JASRAC常務理事の菅原端夫氏は「議論がどうあるかは別に、今の法制度は遵守しなければならない。SARVHの提訴は当然の結果」と話した。
今回、権利者側が開いた会見は、補償金制度の議論を再開を求めるのが主要な趣旨。椎名氏は「どの方法がいいかというのはこの場ではいえないが、いずれにしてもどこかで一定のルールを作っていかなければならない」と主張。さらに解決すべき課題として「ユーザーはコンテンツをできるだけコピーしたいが、その度が過ぎるとコンテンツビジネスが痛手をこうむる。その問題を解決調整するために現在採用されているのが補償金制度だが、必ずしもうまく機能していない」と現状を認識した上で「これらを前提として、問題を解決していく手段や、解決の糸口が見出せるまでの間をどのように対応していくかの答えを探していくというだけ」とまとめた。
また、話し合いに際して(1)補償金制度の機能停止を主張するのであれば、権利者の不利益を補てんするための代替案を提案すべき、(2)ダビング10によりデジタル放送の録画は権利者に不利益をもたらさないと主張するのであればその客観的なデータを示すべき、(3)音楽CDからのコピーに絡んだ補償金制度の対象機器の見直しに応じない理由、(4)補償金制度の見直しに応じないまま時間が経過した場合に権利者が被る不利益の拡大についてどう考えるか--の4点についてメーカー側に回答を求めていくとした。
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