著作権問題が不気味に迫りつつあるなか、動画共有サイトでは音楽ビデオや映画の予告編などのコンテンツをふるいにかける方法を模索している。
この1年、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)や動画共有サイトの人気が、この技術分野を活気づかせている。前者の代表格であるMySpaceは登録ユーザー数が5000万人を超え、後者のYouTubeでは毎日1億本以上の映像コンテンツが掲載されている。
現在、大手エンターテインメント業界は、こうしたサイトに著作権で保護されたコンテンツを削除するよう要求を強めつつある。しかし、オーディオファイルでは著作権を有する作品を排除する方法が開発されてきてはいても、動画となると効果的なフィルタリング方法の開発はほとんど前進していないというのが、頭の痛い現実だ。
「まだ誰も解決できていないのだ」と、匿名を条件に語ったのはフィルタリング企業と交渉中だという、あるネットワーキングサイトの幹部だ。「これに成功すれば、巨万の富が待ち構えている」
近いところまで迫っている企業も出てきた。MySpaceは米国時間10月30日、著作権で許諾されていない楽曲の投稿を排除する手段を講じることを明らかにした。これを実現するために、MySpaceは楽曲認識技術を提供するGracenoteから、全デジタル音源の独自の波形を識別する新技術のライセンス供与を受ける。
Gracenoteの販売およびマーケティング担当シニアバイスプレジデント、Jim Hollingsworth氏によると、GracenoteはMySpaceに投稿された音楽をスキャンし、カリフォルニア州エメリービルにあるGracenoteの1000万曲に及ぶ楽曲データベースと照合するという。このシステムでは、楽曲のほんの数秒分があれば、その楽曲を特定し著作権のあるものかどうかを識別できる。
Gracenoteの事業が急成長しているのは当然のことだ。1998年に設立されたGracenoteは、ここ数週間で動画共有サイトやSNS企業から多くの注目を集めてきている。Hollingsworth氏によれば、MySpaceはGracenoteとの契約に同意するまでたった3日間しか要さなかったという。
「実際、何百という企業がソリューションを求めているのだ」と、Hollingsworth氏は語った。
動画に関していえば、事前チェックなしに映像のアップロードをユーザーに許可しているほとんどの企業は、デジタルファイルのバイナリコード(「0」と「1」の2進数)を識別手段として分析する技術を利用している。しかし、これでは映像の長さをほんの数秒間増やしたり減らしたりするだけで、誰でもシステムを突破できてしまうため、この手法には批判が多い。
Gracenoteを含めいくつかの企業が、より効果的な動画フィルタの開発に動き出している。サンフランシスコに拠点を置く動画共有サイトGUBAの、事業開発担当バイスプレジデントPeter Szatmari氏によれば、Gracenoteが楽曲に対して行っているのと同様の機能を、同社は動画向けに作り上げたという。
「Johnny」と呼ばれるGUBAの映像認識技術には、著作権のあるコンテンツにデジタル署名を施すことも含まれる。Szatmari氏はシステムの詳細を説明することは避けたが、映像のスキャンおよびGUBAの著作権保護作品データベースとの照合に、静止画像と3D技術を使用する点は明らかにした。
つまり、Johnnyは、動画が異なるフォーマットでコーディングされていても、映像の長さが変わっていても識別できるということだ。全米映画協会(MPAA)もこの技術を推奨している。
もちろんまったく完全というわけにはいかないと、Szatmari氏も認める。GUBAのデータベースにまだ入っていない新しいテレビ番組や映画もあるだろう。GUBAの技術者がデータベースに加える前に、ユーザーがテレビ番組「LOST」の最新放映分をアップロードしようとすれば、チェックしようがないというわけだ。
もう1社、いわゆるオーディオ指紋(acoustic fingerprinting)技術と呼ばれる分野で頭角をあらわしている企業が、カリフォルニア州ロスガトスに拠点を置くAudible Magicだ。同社の技術もまた、楽曲のデジタル指紋を、著作権で保護される音楽のデータベースで照合するものだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス