MS検索事業の手痛い過去--幻のグーグルキラー「Keywords」

文:Larry Dignan(ZDNet.com) 翻訳校正:川村インターナショナル2009年01月21日 07時30分

 2000年、MicrosoftにはGoogleキラーとなる独自のサービスがあったが、本格稼動を前にそのプロジェクトは中止となった。その理由は何か。自社のほかの収益源と「共食い」になることを恐れたためである。

 Wall Street Journal(WSJ)が、検索分野でのMicrosoftの失敗について興味深い記事を掲載した。その要旨は次の通り。

 (Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるSteve)Ballmer氏は今後数カ月の間に、1年間に及んだ、数十億ドル規模のYahooのウェブ検索事業買収計画を再開すると見られている。しかし、Ballmer氏が収益性の高いGoogleのビジネスからシェアを奪おうと迫る裏には、語られないある物語が存在する。10年近く前、Ballmer氏がCEOとなって間もないころ、MicrosoftにはGoogleに類似した事業があったが、同社はその事業を打ち切ってしまった。

 2000年、Googleがウェブ検索と広告を組み合わせる前、Microsoftは「Keywords」と呼ばれる初歩的なシステムを保有していた。Googleと同じくウェブ検索と広告が組み合わされたものだ。契約を結ぶ広告主も出始めていた。ところがMicrosoftの経営陣は、同社のほかの収益源との共食いを恐れたこともあって、そのサービスを2カ月後に閉鎖してしまった。

 WSJはさらに、2003年にMicrosoftがOvertureの買収に失敗したことも取り上げている。そのOvertureをYahooが買収して、有料検索ビジネスに乗り出して行ったのである。これにYahoo買収の失敗を加えると、MicrosoftにはGoogleに対抗する手段が3つあったことになる。

 確かに興味深い話だが、いくつか指摘すべき点がある。

  • たとえMicrosoftがKeywordsを事業化していたとしても、それでGoogleに勝てたかどうかは定かでない。その理由は「焦点」にある。Googleはキーワード検索に焦点を絞っていた。しかしMicrosoftは違った。共食いにかかわる心配というのは常に、Googleを含む既存の企業にとってのアキレス腱だ。Microsoftのドル箱はその当時も今も、「Windows」と「Office」である。現在でもウェブ検索は気を散らすものでしかない。
  • Overtureを過大評価するべきではない。WSJの論調は、Overtureを買収してさえいれば、MicrosoftはGoogleと十分に戦えたというものだが、それは違う。OvertureはすでにGoogleによって打撃を受けていた。Overtureは落ち目にあった。だから売りに出されたのである。また、YahooもOvertureではあまり多くの成果を上げられなかったという点にも留意しておきたい。検索市場でのMicrosoftのシェアは、多少は伸びていたかもしれないが、Overtureの買収は決定打にはならなかったはずだ。
  • さらに大きな視点から見た場合、Microsoftには一貫性のあるウェブ戦略が欠けている。有料検索サービスに関しては、1995年の段階ですでに開始していた。Microsoftが熟知していた広告フォーマットであるバナーを中心とするものだった。当時、Microsoft経営幹部の間に、キーワード検索がディスプレイ広告の利益を侵食するのではないかという恐れがあったことは間違いない。しかし、客観的に見れば、Microsoftの重要問題はまだ残っている。同社のMSNにはあまり力を入れていないのだ。
  • とはいえ、Microsoftを無視することはできない。それは今でもだ。WSJの記事で取り上げられていたBallmer氏は、キーワード検索ビジネスでは我慢が足りず、チャンスをふいにしたことを分かっている。ここで注意すべきことが2つある。1つ目は、Ballmer氏が自分のミスを認識しており、それを繰り返したくないと思っていることだ。それは優れた経営者の証である。2つ目は、Microsoftには長期化する地上戦に我慢強く取り組むリソースがあることだ。そうした事実を考えれば、Microsoftにはいずれ検索分野の有力企業となる可能性があると見るべきだろう。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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