Appleは、Macworld Conference & Expoとの関係を終わらせる決断を下し、テクノロジの有力企業ではなかった時代から続いていた最後の結びつきの1つを断ち切ろうとしている。
2009年1月に開かれるMacworldがAppleの参加する最後のMacworldとなり、最高経営責任者(CEO)のSteve Jobs氏も登場しないというショッキングなニュースは、ここ数年におけるAppleのあり方を明確に示す場となっていたイベントへの参加について、もはや不要であるという同社の決断を浮かび上がらせた。そうすることによりAppleは、その象徴的な創設者が同社を現在のように取り仕切らなくなったときのための準備を進める一方で、顧客アピールにおける戦略的思考の転換を固めようとしている。
Appleは、2種類のマーケティング手法に依拠している。1つは、「Mac」とPCの比較広告やiPodを聴きながらシルエットが踊るCMのように、クールな音楽に合わせて何ができる製品かを伝える、趣向を凝らしたCMだ。2つめは、「Stevenote(スティーブノート)」だ。つまり、新製品の紹介と戦略の発表の才能に長けたSteve Jobs氏自ら、一般(Macworld)やプレス(WWDCやiPodイベントなど)の両方に向かって話しをするのである。
Macworldは、Appleお墨付きのStevenoteであったといえる。同イベントは、技術系メディアを強力に引きつけ、Jobs氏のプレゼンテーションが行われた日の夜は、アメリカ中のありとあらゆるニュース番組で取り上げられた。6月のWorldwide Developers Conference(WWDC)や9月のiPodイベントなど、1年間のうち、Appleがプロデュースするイベントは他に色々あるが、必ずしもMacworldほど話題に上っているとはいえない。だが、Macworldでは、Appleの「次なる呼び物」に対し、メディアと顧客が期待をふくらませるように仕向けられてきた。このような熱狂は、Appleが2007年1月、長くうわさになっていた携帯電話市場への参入を「iPhone」とともに明らかにしたとき、ピークに達した。
しかし、Macworld Expoのような業界イベントは、かなり前からApple内部ではその輝きを失いつつあった。Appleは、パーソナルコンピューティング業界や携帯電話業界の同業者と付き合うことに多くの時間を費やすような会社ではない。他の会社が定期的に呼ばれるようなパネルディスカッションやプレスイベントの類で、Appleの欠席が目立つような場合が少なくない。
そして、極めて単純なことだが、プロフェッショナルのためのものだったテクノロジが、誰もが日常的に利用するものへと進化するに従って、テクノロジマーケティングの性質が大幅に変化したのだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス