Steve Jobs氏の健康を心から心配する人は、まず体に害を及ぼすことをしないという、治療の大原則を肝に銘じておくべきだ。
Silicon Alley InsiderのHenry Blodget氏は、おそらく、Jobs氏の健康を心配しているAppleの投資家のために、Appleを恥じ入らせてJobs氏の膵(すい)臓がんが再発したかどうか公表させることをこの夏の個人的な使命と決めたらしい。折よく報じられた、仕事上の関係者たちがJobs氏の外見を見て不安になっていると「ヘッジファンドの情報源」が語ったとされるNew York Post紙の記事や、CNET Blog NetworkのMatt Asay氏が、証拠もなしに、「Mobile Me」「iPhone 3G」の開始時の問題は、Jobs氏が健康上の理由から十分に監督できなかったことが原因かもしれないと示唆した、下劣で場当たり的な考えが、彼の決意を後押ししたようだ。
ほんの少しの間、従業員数2万人の会社の日常業務が1人の人間の健康に完全に左右されているなどというばかげた考えを脇に置いてほしい。Blodget氏を始め、Jobs氏の健康について公然と憶測する人たちは、彼の外見と、彼がかつてがんを患ったという事実以外、自分たちの見解を裏付ける証拠を提示していない。
実際、Appleにとって、Jobs氏の健康、そしてどのような情報を投資家に公表するか考慮するかは問題だ。しかし、Jobs氏の健康問題に関するうわさが広まった2006年と、Fortune誌の記事で2003年にJobs氏ががんと診断されてからAppleが公表するまで9カ月かかったことが明らかにされた2007年と、これまでこうした問題は隠されてきた。
繰り返しになるが、企業の財務情報の公開方法には基準があるが、企業が幹部の健康問題をどのように公表すべきかについては普遍的な基準は存在しない。
一般的に、コーポレートガバナンスの専門家は、経営陣は最高経営責任者(CEO)の健康が経営能力に影響を及ぼしているか判断する責任があると考えている。同様に、CEOは自分の健康状態を経営陣に正直かつ率直に伝える責任がある。
Appleは、米国時間7月21日に行われた電話会議で、声明を発表し、この問題に対処しなければならなかったが、残念ながら、憶測をやめさせる効果はほとんどなかった。最高財務責任者(CFO)のPeter Oppenheimer氏は、同会議で、「SteveはAppleを愛している。彼は経営陣に望まれてCEOを務めている。Appleを去る予定はない。Steveの健康は個人的な問題だ」とする声明を読み上げた。
この声明はBlodget氏にとって十分ではなく、「株主の視点から見れば、『個人的な問題』とする回答はとうてい受け入れられない」と彼は主張している。そしてさらに、彼は記事に添えられたコメントの中で、「あまり気が進まないが、どちらかといえば、『個人的な問題』という声明によって、彼の病状が深刻な可能性が高まったように見えるとする、先の予想に賛成だ」と述べている。
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