「Microsoft Office」をオフィススイートの主役の座から引きずり下ろす試みは、巨大な敵対勢力ではなく、アリの大群さながらの無数の小さな勢力によって進められているようだ。
人気の生産性スイートに含まれるデスクトップアプリケーションを従来使っていた作業をオンラインで処理するため、多数の新興企業がサービスの開発に取り組んでいる。米国時間10月11日からサンフランシスコで開催されたカンファレンス「Office 2.0」では、そうした企業の多くによって最新の成果が披露された。
その中の1社であるSmartSheet.comは、オンラインコラボレーションソフトウェアのアップグレード版を公開している。これはスプレッドシートと電子メールのホスティングサービスを軸に構築されたソフトウェアだ。といっても、単にExcelをオンライン上で模倣したものではなく、Web 2.0でお馴染みのツールを使用してプロジェクト管理をより円滑に行えるようにしている、とSmartSheetの社長は説明する。
「電子メールやスプレッドシートを使った既知のパラダイムと、Web 2.0によるコラボレーションとプロセスの改善によって得られる利点を組み合わせたサービスの実現を目指している」とSmartSheet社長Mark Mader氏は言う。SmartSheet社はMicrosoftのお膝元であるレドモンドに隣接するシアトルに本拠を置く。「現在既にオンラインで提供されているものと同類のどこにでもあるサービスにするつもりはない。そうしたサービスはデスクトップアプリケーションとほとんど変わらない」(Mader氏)
Microsoftの牙城を少しずつ切り崩そうと考えているこれらの新興企業にとって、Wiki、アプリケーションのインターネット配信、ウェブ対応のコラボレーションといったWeb 2.0の機能を実務で利用することが自社製品を差別化するための目玉となっている。彼らがもう1つの利点として強調しているのは、アプリケーションを購入せずにホスティングサービスを利用することで、初期投資を抑え安く済ますことができる点だ。
同じくらい重要な差別化要因として、Office 2.0サービスを提供する多くの企業が、Microsoft Officeが使用している従来の販売ルートを回避している点が挙げられる。こうした新興企業は、営業人員が限られていることを自覚しており、企業内のITマネージャに直接販売するのではなく、アプリケーションを実際に使用する社員に直接アピールすることで、草の根レベルから普及させようと考えている。
Salesforce.comで成功することが実証されたモデルでは、企業向けの生産性アプリケーションホスティングサービスの多くは、部署に属する各個人がクレジットカードで購入できるくらい十分に安価な価格設定になっている。
新興企業CogheadのCEOであるPaul McNamara氏によると、こうしたオンラインサービスの魅力は、裏口販売による伝染性マーケティングという側面だけではないという。Cogheadのアプローチの背後にある考え方の1つは、技術に精通しているエンドユーザーに、より大きなコントロールを与えるというものだ。
「DIYウェブアプリケーションが大きな広がりをみせており、ビジネスの現場に最も近い人たちがソリューションを構築できる力を持つようになった」とMcNamara氏は指摘する。「多くの人たちは、ウェブ配信モデルとWeb 2.0がエンドユーザーへの普及を促す重要な要因であると考えている」(McNamara氏)
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