スパイウェアを、セキュリティの最優先課題から取るに足らない存在に格下げしてしまうポテンシャルを秘めたソフトウェア製品が登場する。そのソフトウェアとは「Windows Vista」だ。
スパイウェアは、過去数年にわたって、Microsoft製OSのユーザーにとって深刻なセキュリティ問題となっており、この潜行性ソフトウェアに対抗するサードパーティー製ツールも多数登場してきている。しかし、一部のアナリストによると、最も強力な防御プログラムはおそらくこれから出荷されることになるという。
Microsoftは、今年中にWindows XPの待望の後継製品となるWindows Vistaをリリースする。このOSは、スパイウェアの侵入を防ぐような設計となっており、OSとInternet Explorerの心臓部に重要な変更を加えられるほか、スパイウェア対策ツールの「Windows Defender」も組み込まれる予定だ。
GartnerアナリストのJohn Pescatore氏は、Vistaが導入されれば「スパイウェアの脅威は間違いなく低下もしくは減少する」と述べている。「スパムはすでに管理できるようになった。いまでもスパムの侵入はあるが、その割合はかなり低くなり、侵入があっても対処できる。スパイウェアに関しても同じで、いずれコントロールできるようになる」(Pescatore氏)
MicrosoftがVistaの開発を進めている間に、スパイウェアの問題は増大し、セキュリティ関連の悪夢となった。専門家は、画面に広告をポップアップ表示させたり、PCユーザーの操作を見張る悪質なソフトウェアが、ユーザーの気付かないうちに4分の3以上のPCに忍び込んでいると考えている。今年はじめに公表されたFBIによる調査によると、80%の企業からスパイウェア関連のトラブルの報告があり、ウイルス、ワーム、トロイの木馬に次いで、これが非常に一般的なセキュリティ関連の問題になっているという。
Enderle GroupアナリストのRob Enderleは、Windowsは新バージョンが出るたびにセキュリティに何らかの改善が施されてきたが、Vistaではさらに大きな改善があると言う。「Vistaは、Microsoftが悪質なソフトウェアに最も悩まされていた時期に開発が始まったものであるため、同社のほかのプラットフォームに比べて、最も強力な防御機能が搭載されている」(Enderle氏)
MicrosoftのAustin Wilson氏(Windows Clientグループ、ディレクター)によると、スパイウェアはXPユーザーを悩ませてきたが、Vistaが動作するマシンに悪質なソフトウェアを送り込むのはXPほど容易ではなくなるという。
「スパイウェア作者が現在使っている相当数の攻撃媒介を排除した。Windows Vistaの登場でスパイウェアが無くなるとは言わない。だが、大きな変化は現れると思う」(Wilson氏)
マイクロソフトは、多角的なアプローチでスパイウェアに対抗しようとしている。Vistaの初期設定では、XPに比べて、ユーザーに与えられる権限の種類が少なくなる。そのため、「管理者」権限をフル取得しないと、アプリケーションのインストール作業などを行うことはできない。
また、Vistaに組み込まれる「Internet Explorer 7」では、あらかじめ許可した場合を除いて、同ブラウザが一時ファイルフォルダ以外にデータを書き込めないようにすることで、悪質なコードがひそかにインストールされるのを防ぐようになる。さらに、何らかの形でスパイウェアに感染しても、Windows Defenderがそれを除去することになる。
「Vistaには3重の保護機能が搭載される」(Wilson氏)
これはVistaの購入者にとっては朗報だが、スパイウェア対策ソフトを販売しているベンダーにとってはそうとはいえない。スパイウェア対策ソフトの市場は最近、全世界で活況を呈しており、IDCによると、2004年の売上高は前年比240.4%増の9700万ドルに達したという。しかし、Webroot SoftwareやSunbelt Softwareなどのスパイウェア対策ソフトメーカーは、Vistaの登場で冬の時代を迎えることになると、アナリストらは述べている。
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