GNU GPL(General Public License)に改革の波が押し寄せている。GPLは、フリーやオープンソースのソフトウェアをめぐるさまざまな動きを支えてきたライセンス体系だが、これにはMicrosoft会長のBill Gatesが厳しい批判を展開してきた。
GPLを著したRichard Stallmanは現在、GPLの改正に取り組んでいる。同氏によると、GPLの改正によって以下3つの効果が期待できるという。まず、ソフトウェア特許に対するより柔軟な対応が可能になる。次に、GPLが適用されたソフトウェアがネットワークに接続されたいくつかの環境や慎重に管理されたハードウェア上で、いかに使用され得るかが明確になる。そして、GPLが適用されるソフトウェアとその他のライセンスが適用されるソフトとの組み合わせを阻んでいる障壁を低くできる可能性がある。
現行のGPL Version 2がリリースされてから現在に至る13年間に、GPLはコンピュータ業界の脇役から主役へと変身した。GPLに基づいて配布されるソフトウェアは、今ではFortune 500リストにランクインする大企業各社で広く利用されており、大手IT企業の大半が同ソフトウェアを支持している。しかし、こうした立場の変化に伴って、同ライセンスのアップデートを熱望する声が高まり始めた。
「GPLは今や数十億ドルの規模を持つ業界の中心的存在となった。しかし率直に言って、(GPLは)本来そのような目的で考えられたとは思わない」と語るのは、Gray Cary法律事務所所属の弁護士で、GPLやその他のライセンスについて幅広い研究を行ってきたMark Radcliffeだ。
例えば、一部の関係者からは、GPLを採用したソフトウェアのユーザーが特許訴訟に巻き込まれはしないかとの懸念を軽減するのに役立つ明確な説明を求める声が上がっている。またGPLには、インターネット上での高度なWebサービスの構築や、Trusted Computing技術によるセキュリティ強化といった業界の最近の取り組みに対応すべく、改善の余地が残されている。
通常、ソフトウェアの利用方法を定めた規定を綿密に検討するのは弁護士だけだが、GPLの場合は事情が異なる。
GPLは、競争が支配する業界において協力関係が成り立つことを示すのに役立っている。同ライセンスの力を示す最も説得力のある実例はLinuxだ。Linuxは、MicrosoftやSun Microsystemsなどの大手コンピューティング企業にとって、大きな脅威となりつつある。
GPLはソースコードの扱いも規定している。プログラムを作成する際、開発者はまずソースコードを記述し、それをコンピュータが理解可能なバイナリファイルに変換する。ソフトウェアの使用者はソースコードの閲覧/修正/再配布を自由に行ってよいというのが、GPLの根幹にある考え方だ。ただし、修正したコードを一般公開することと、GPLに基づいてライセンス供与を行うことが、その条件となっている。この点は、複数のオープンソースプロジェクトで利用されているいくつかのライセンスが、ソースコードのプロプライエタリ化を認めているのとは対照的だ。
GPLソフトウェアの基準を満たすもう1つの要件は、GPLが適用されている他のソフトウェアとしか密接な統合が許されない点だ。この条項は、開発されるGPLソフト数の増大には貢献する一方で、GPLは「ウイルスのようだ」との批判も招いている。また、この条項から、GPLコードを不注意もしくは不正にプロプライエタリ製品に使用した場合に、全てのソースコードの公開が義務付けられるのではないかとの懸念が生じた。特にGatesは、GPLソフトモジュールが行く手に存在するあらゆるものを片っ端から食べ尽くし、触れたソースコードはすべて公開を迫られるとして、同ライセンスを「パックマンのようだ」と表現したことがある。
もっとも、今のところは、そのようなシナリオは現実のものになっていない。しかし、GPLは別の方法でMicrosoftを脅かしている。同ライセンスは、巨大かつ活気溢れるプログラミングコミュニティの育成を助長したのだ。
Microsoft はGPL新版の登場に目を光らせている。Stallmanによると、新版の名称は「GPL Version 3」になりそうだという。しかし、おそらくGPLが適用されたソフトウェアのコードとプロプライエタリコードとを区別する規定には何の変更も行われないだろう。
世界を駆け回っているStallmanはモロッコ滞在中に電話インタビューに応じ、「(新版は)全体的に見て、Version 2と同じものになりそうだ」と述べた。「新版GPLの下でソフトウェアをリリースする人々が、それらの改正に不満を抱くとは思えない」(Stallman)
しかし、こうした改正は当分実施されない。「まだ世間に何かを示せる段階にはない。われわれは自分たちが何をしたいのかを分かってはいるが、どのようにそれを実現するかははっきりしていない」とStallmanは語る。Stallmanが草案についての意見を求め始めるのは、同氏の側で準備が整い、かつ機嫌が良い時になるだろう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」