VeriSignは先日、インターネット運営上の鍵を握るICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)の提訴に踏み切った。同社が管理する.comと.netで終わるドメイン名のマスターデータベースを利用した新サービスの公開を、ICANNが再三阻害しており、それが反トラスト法に抵触するというのがその理由である。この裁判は、グローバルネットワークの運営方法を根本的に変えてしまう可能性があるものだ。これまでも微妙であったドメイン名の管理業務における商業性と公共性のバランスが、さらに崩れてしまうかもしれない。
詳細な契約内容に目を通すと、一見この訴訟は非営利団体であるlCANNと営利団体であるVeriSignという2大グループの間で繰り広げられるビジネス上の論争という様相を呈している。だが別の観点から見ると、インターネットの特徴であるドメインネームの仕組みを効率よく管理する2つの巨人が、ついに公の場で直接対決に臨んだと見ることができる。この戦いの行方が、今後のメールやウェブの仕組み、ドメイン名の売買などに影響を及ぼすことは間違いない。
VeriSignのCEO、Stratton Sclavosは、「運営を民間の組織に委ねて、新しいサービスを開発する機能を持たせ、ビジネスとして成り立つような仕組みを作らなければならない。我々はそうした大きな転換点を迎えている」と述べている。
ICANNにしても、こうした論争や裁判沙汰に巻き込まれるのは初めてではない。これまでの短い歴史の中で、すでに10回近く訴えられているのだ。しかし今回の一件は、組織のインターネットに関する規制当局としての能力が問われていることがいままでとは違う点だ。裁判の結果によっては、規制当局としての立場が認められるか、もしくはその機能を全く新しい組織に譲り渡すかという点で、商務省や米国議会、国連の意見が求められる可能性もある。
VeriSignによる訴訟は、インターネットガバナンスが非常に注目される最中に行なわれた。すでに各国政府は、国別ドメイン名の管理手法に対してICANNに不満を表明している。ICANNに警告を与えるため、ITU(国際電気通信連合)もジュネーブで開催した会議にてこの問題を取り上げた。
さらに、米国議会が現在行っている提案では、ICANNを連邦諮問委員会に移行させ、米国政府と契約を結んでいる分離組織という特異で疑似独立的な存在形態にピリオドを打つよう求めている。
事態を一層複雑にしているのは、ICANNを見舞った2回目の訴訟だ。原告側であるドメイン名登録業者のName.comおよびRegisterSite.comは、ICANNがWait Listing Service(待機リストサービス)において、原告側よりVeriSignを不当に有利に扱っていると提訴した。これに対し、ICANNの代表はローマで開催された会議の席上で、訴訟の内容を検討中だと述べた。「どうも納得がいかない。どの辺りが問題なのか分からない。原告側の企業とは他の分野ではうまく協業しているのに」とICANNの広報担当Kieran Bakerは首をかしげている。
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