ICANN対ベリサイン、ドメイン名管理をめぐる戦い - (page 3)

管理者にふさわしいのは誰?

 VeriSignは、ICANNが同社のビジネスプランを邪魔することを禁止する法的措置を求めている。だが、VeriSignはそれ以上の収穫を得ることができるかもしれない。というのもICANNはここ数年誰の賛同も得ておらず、同団体の反対派が組織の解体もしくは運営の移譲の機会を伺っているからだ。

 すでに国連は、ICANNの業務を引き継ぐ候補先として傘下のITUをあげる動きを進めている。

 ITUの戦略・政策部門を統括するTim Kellyは講演で、ITUがICANNの少なくとも一部の機能でもよいから後継として引き受けたいと売り込みをかけている。ITUの強みとしては、その中立性に加えて「国際的な正当性や信頼性、責任ある立場、法の適正な執行過程を監視できる点」などをあげている。

 とはいえ、こういった変革を歓迎しない者もいる。ICANNの擁護者は、批判する組織は他の選択肢を想定したうえで、実際には何を望んでいるのか考えるべきだと促す。「国連は往々にして物事の決定が遅すぎる」とRegister.comのBroitmanはいう。「彼らは非常に官僚体質で、一般企業を交えて議論することは正直言ってあまりない。ICANNのように改革への姿勢や効率性を国連に期待することはまず無理だろう」

 Ralph Naderが設立した消費者保護団体Public Citizenの法廷弁護士Paul Levyは、数年前ICANNを訴えようと考えていた。しかし同団体は、政府がICANNに代わって直接インターネットを管理することになると、ICANNの代名詞となっている密室会議や秘密主義傾向よりもっとひどいことになることを恐れ、訴訟を見送った。

 「たとえば議会や国連組織の手で管理させた場合、事態がよくなるのか悪くなるのかが問題だ」とLevy。「4年前のあの時、われわれはまずICANNに管理の機会を与え、訴訟を起こして混乱を起こす前に彼らの仕事ぶりを監視してみようと思ったのだ」

 Levyによれば、VeriSignの訴訟がまさに混乱を起こすことになるかもしれないという。「VeriSignがやったことは独自の判断に基づく現実的な解決策だった。事態が悪い方向に向かったため、混乱を覚悟で訴訟に踏み切ったのだ。ただ、今後我々利用者がどこに向かって歩むのかが気がかりだ。いまは我々の向かう将来像はまだ明確ではない。VeriSignのような主要なプレイヤーが問題提起をはじめたのだから、今回のような事態は避けられないだろう」

儲け主義と公共の利益

 VeriSignのSclavosは、インターネットの核心部分の商業化をさらに推進しようと堂々と主張している。「純然たる学術系や公共部門によって運営されていたインターネットに商業的な要素が加わってきたように、移行は避けられないものだ」と同氏は述べている。

 まるでインターネットマーケティング担当者のような意見だが、そう聞こえても不思議ではない。Sclavosは電気技術者としての教育を受けた人物だが、1995年VeriSignに入社する前はMIPS Computer SystermsやGO Corporation、Taligentなどのテクノロジー企業で、セールスおよびマーケティング担当者として出世街道を歩んできた人物なのだ。2000年のドットコムブームのピーク時、Sclavosはインターネットドメイン名の急成長を目の当たりにし、.comと.netのデータベースを運用してドメイン1件当たり6ドルの年間使用料を徴収していたNetwork Solutionを210億ドルで買収した経験を持つ。

 しかしそれ以降、ドメイン名の売上は低迷してしまった。腕利きのセールスマンを嘆かせたのは、2001年12月から2003年12月の2年間、.com登録者数の伸びはわずか年率5.5%に留まったことだ。一方VeriSignの株も、2000年当時の輝かしい栄光の日々を再現することはなく、同社は昨年2億5000万ドルの純損失を計上している。Sclavosが同社の最も有名な企業資産であるデータベースを使って一儲けしたいと考えるのは、業績不振も大きな理由だ。

 「ICANNは同団体の権限が及ぶ範囲を徐々に広げていっている」とVeriSignの公益事業部門バイスプレジデントTom Galvinは指摘する。「ICANNのやり方につきあっていると、まるで少しずつ死に追いやられているようだ」

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