容疑者を含む9人が死亡したフィンランドの銃乱射事件の翌日には、YouTubeを調べても、Pekka-Eric Auvinen容疑者がかつてYouTubeユーザーだったことを示す痕跡はほとんどなかった。
YouTubeは迅速に対応し、事件の発生から数時間以内に、Auvinen容疑者のビデオとプロフィールページをサイトから削除した。暴力的な事件に対する、適切で評価できる対応だと評価する意見も多いが、ユーザーが事件について理解を深められるように、YouTubeには事件後もビデオの公開を続けてほしかったと考えている観測筋もいる。
「たしかに、こうしたビデオを不快に思う人は多いだろう」とカリフォルニア大学バークレー校で博士課程を修了した研究者のSonja Baumer氏は言う。その一方で、Baumer氏はこう警告する。「なぜ容疑者がこんなことをしたのか、その理由を一般の人々はどうやって知るのか? 人々は知りたがっており、思ったことを表明する権利があるはずだ。われわれにどうしろというのか? 今度また同じような事件が起きるまで忘れておけというのか?」
Baumer氏が言わんとしているのは、Auvinen容疑者が「Sturmgeist89」というユーザー名でYouTubeに投稿したビデオが、6人のクラスメートと学内看護師、校長を射殺したとされる事件について、その動機を知る手がかりを与えてくれるかもしれないということだ。
Baumer氏は、今回の事件が起きる以前に、YouTubeにおける若者の政治参加について研究していた。移民反対派の若者グループを調査していて、Baumer氏は偶然、Auvinen容疑者と間接的なつながりがある極右思想のYouTubeユーザー数人を見つけた。
当局の話では、事件の数時間前に、Auvinen容疑者は犯行予告ビデオをYouTubeに投稿していたという。予告ビデオ以外にAuvinen容疑者がアップロードした88本のビデオクリップの一部は、フィンランド警察が「過激思想」と呼ぶAuvinen容疑者の思想傾向を浮き彫りにしていた。YouTubeの広報担当者はコメントを拒否している。
公平を期すために言っておくなら、YouTubeはどんな方針をとっても反発を受ける状況にある。ビデオの公開を続ければ、無神経だと批判される。反対に、たとえ不快な内容であっても、ビデオを削除すれば検閲だと非難される、というわけだ。
世界でもっとも人気が高いビデオ共有サイトであるYouTubeは、現在、言論の自由や検閲、YouTubeには犯罪者を発見する責任があるかどうかといった問題をめぐり、白熱した議論の真っ只中にいる。オーストラリアの新聞「The Age」に米国時間11月8日に掲載された記事には、YouTubeは犯罪者や犯罪に関係する恐れがあるビデオのフィルタリングをすべきだと思う、という犯罪被害者支援協会(Crime Victims Support Association)の会長、Noel McNamara氏の言葉が引用されている。
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