広告という「金のなる木」をさまざまな市場に植え付けてきたGoogle。同社の広告ネットワークの次なる標的は成長著しいビデオゲーム内広告、というのが、業界ウォッチャーの間でもっぱらの噂だ。
同社が買収を計画しているとされるのは、Adscape Media。カナダのオンタリオで設立され現在はサンフランシスコに拠点を置く、ゲーム内広告専門の小さな企業である。この件についてGoogleにコメントを求めたが返事はなく、Adscape Mediaの広報担当者も、回答は差し控えるとした。
業界のある内部関係者は、匿名を条件に、この交渉が難航しているということを明かしてくれた。もしGoogleがこの買収を成功させれば、Adscape Mediaよりも大きなゲーム広告企業Massiveの買収を2006年に済ませたGoogleの宿敵、そう、Microsoftに対抗するための材料を手に入れることになる。ただMicrosoftが広告事業においてGoogleよりも優位に立てるかもしれないのが、ゲーム内広告分野だ。この背景には、圧倒的な人気を誇る同社のゲーム機「Xbox 360」、そして多数のゲームタイトルの存在がある。
「Googleは、既存の大手広告プロバイダーを脅かす存在になれると思う」と、調査企業Yankee Group ResearchのプログラムマネージャーであるMichael Goodman氏は語る。「Googleにとって最大の課題は、広告提供のプラットフォームとなるXboxから締め出されないようにすることだ」(同氏)
ゲーム内広告は今やニッチ市場というよりも、広告ターゲットとなる最適な購買層を特定できる、成長著しい市場だ。Nielsen Entertainmentによる最近の調査で、最も長時間ビデオゲームをプレーし(平均週12.5時間)、テレビを見る時間が最も短い(同9.8時間)のは、18〜34歳の男性だということが分かっている。
調査企業Parks Associatesでブロードバンドおよびゲーム担当のディレクターを務めるMichael Cai氏によると、米国では、週20時間、月50ドルをゲームに投じる「パワーゲーマー」が、600万の世帯に最低1人は存在するという。また、広告収入で運営され、無料で楽しめる「Tetris」やカードゲームなどの「カジュアルゲーム」のプレーヤーは、1500万人を超えるそうだ。
「今やビデオゲームを支えているのは、地下室に集まるティーンエージャーではなく、莫大な可処分所得を謳歌している人たちだ」と、シンクタンクInterpublic Emerging Media Labのコンテンツエディター、Jeff Berg氏は語る。「つまり、Googleが参入するにはうってつけの市場だ。もし効率的に実行できればの話だが」(同氏)
この市場の金銭的な価値は、大方が予想するよりもかなり大きな数字になるだろう。Parks Associatesによれば、ゲーム内広告の売上額は、2006年は1億2000万ドル、2007年には2億ドルに達し、2008年には3億ドルにまで拡大する見込みだという。Yankee Groupでも、2010年までにはその額は7億3200万ドルに達すると予測している。
Adscape Mediaの買収でGoogleが狙うのは、大量の新規顧客ではなく、Adscape Mediaの持つテクノロジだ、とGoodman氏は指摘した。「広告主たちと既に強固な関係を築いているGoogleだが、これからはゲームパブリッシャーとの関係を築くことが必要になるだろう」(同氏)
過去1年半、Googleは、印刷媒体やラジオ広告への参入を急速に進めてきた。同社独自のオンラインによる広告自動配信システムを使用して、オフラインメディアに潜在する顧客へのアプローチ手段を提供しているほか、2006年初頭にはラジオ広告プロバイダーのdMarc Broadcastingを1億200万ドル強で買収し、ラジオ広告配信のテストを重ねている。
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