ソニーはビデオ共有サイトGrouperを獲得するために6500万ドルを支払うことで合意した。Grouperの市場シェアはわずかであり、利益も出していない。この動きは、ビデオ共有業界内の他社に対する価格水準の確立を助け、市場リーダーであるYouTubeの価値に対する業界観測筋による憶測を加熱させた。
ソニーが米国時間8月23日に、オンラインビデオ市場のシェアが1%足らずのGrouperを買収したことで、市場シェア43%を占め、規模が遥かに上回るライバル企業YouTubeに対する憶測が促された。もしある企業がYouTubeを明日にでも買収するとしたら、一体いくらを支払うことになるか?
「バイラルビデオ市場は現在大変な人気を呼んでいる」とRadarResearchのマネージングパートナーであるAram Sinnreich氏は言う。「(オンラインビデオ市場リーダーの)YouTubeが10億ドルで買収を提案されたとしても不思議でない。同社にその価値があるかどうかは別問題だが」(Sinnreich氏)
ビデオ共有サイトでは、一般利用者が自作映像を掲載できる。そこでは映像の作り手が踊ったり歌ったり、演じたり、ふざけたり、口パクしたりする姿が見られる。あまりビジネスとして成り立ちそうにないように見えるが、200社以上の企業が、ユーザーが作成したような雰囲気のコンテンツを掲載している。またこのサイトにはティーンエージャーや若者によるアクセスが殺到している。
エンターテインメント関係のアナリストらはこの数週間、人気の高いサイトは高値を付けると予想していたが、今回のソニーの買収でその予想が正しいことが証明された。しかし、オンラインビデオ会社の価格について、Grouperの買収はある種の基準を確立したが、その妥当性には多くのあいまいさが残されたままだ。これは、オンラインビデオ会社の価値について、通常の算定基準が通用しなくなっているためだ。ちょうど1990年代後半のITバブル時代と同じである。
ユーザーが投稿した映像をホスティングすることでお金儲けができるかどうかは、まだ誰にもわからない(同分野の主要な独立系企業のいずれもまだ利益を報告していない)。参入障壁の存在の有無についてもほとんど知られていない。どのエンターテインメント会社がこの市場に参入できるかが不明瞭である。さらに一部のサイトでは著作権の問題が待ち構えている。こうした全ての問題にもかかわらず、同セクターの関係者が話題にするのは「ウェブサイトへのアクセス数」ばかりである。
News Corp.がMySpace.comの親会社Intermixを取得するために5億8000万ドルを支払った理由は、多数の忠実なアクセス者が存在するということであった。当時この動きは業界関連メディアから冷笑されていた。News Corp.による買収当時、MySpaceの1カ月あたりのログイン数は1200万に過ぎなかった。
その当時の批判内容は、News Corp.の最高経営責任者(CEO)であるRupert Murdoch氏が高い金額を払い過ぎたというものであった。しかし、もはや様子は違う。Googleは8月に入り、9億ドルを支払い、MySpaceのサイト上で4年間近くにわたり検索機能と広告を提供することで合意している。
この点をYouTubeと比べてみると、2005年2月に設立された同社は、アクセス数が1カ月あたり1600万に達している。
YouTubeに10億ドルの価値が認められるもうひとつの理由として、ソーシャルネットワーキングサイトのFacebookがViacomからの買収提案を退けたことが挙げられる。FacebookはMySpaceに続いて2番目の規模を有し、1カ月あたりの利用者数は900万以上である。BusinessWeekが3月に伝えたところによると、Viacomの提示額7億5000万ドルに対して、Facebookは20億ドルを要求しているという。
Grouperが市場シェア1%足らず(トラフィック追跡会社Hitwise調べ)で6500万ドルを獲得したことは、市場シェア43%を有するYouTubeの市場価値に対する憶測を加熱させるばかりだという。
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