支えたのは、より高みを目指すという決意--本の虫が飛び込んだ「宇宙→生物→IT」の航海記(第4回:小野裕史) - (page 3)

組織の拡大とプレッシャー

--CAモバイルは市場の拡大という追い風も受けて急速に成長していますが、小野さんも開発者から専務という立場に変わりましたよね。そこでの戸惑いなどはありましたか?

 取締役になったのは3年前です。5人の頃は自分が頑張れば良かったのですが、大きくなると当然ですがそうもいきません。「プログラミングはやるな!マネージメントをやれ!」と言われ見よう見真似でやりましたね。正直、寂しかったですよ。やっぱりプレイヤーでしたから、いきなりマネージメントと言われてもね。

--資金的にも人材的にも色々なことが仕かけられるというポジションと、企業力がある現在においてのモチベーションはいかがですか?

 今の社員数は連結で約400人。市場も成熟しているし、競合も増えているので、打率は低くなっています。また、会社の組織としても、規模が大きくなってきたのでそうそう失敗できないというプレッシャーもあります。

 その意味では難易度は以前に比べて高いけど、でもうまく行けば大きな成果物をえることができます。山を登ったらもっと高い山を登りたいという感じに似ていますね。

--現在どのようなお仕事をされているのですか?

 広告の営業部隊とポータル以外はすべて僕が見ています。子会社や海外、コマースなど。幅広いですが部下が優秀なので助かります。プログラミングをやりたいという気持ちはありません。僕よりも優秀な人材に任した方がいいですからね。

--会社が大きかろうが、小さかろうが、悩むときは悩みますよね。小野さんはうまく行かない時の気持ちの浮き沈みに対して、どのように対処していますか?

画像の説明 「苦しいながら真摯に生きつつ僕を育ててくれた両親に少しでもよりよい時間を返せれば、という想いは僕の『少しでも高みを目指せれば』という想いの根っこかもしれません」

 一番辛かったのは、入社直後でした。自分の給料分をどうやって稼ぐかは大きな悩みでしたね。でも、この先の楽しいことを考えると、今の辛いことを忘れてしまうという性格です。良い意味で忘れやすいということでしょうかね。

--こんなことを聞くのは失礼かもしれませんが、若くしてベンチャー企業に入り、仕事上で年齢の壁を感じたことはありますか?

 正直、感じたことはありませんね。社内はみんなが若いベンチャー企業ですから。でも、エスタブリッシュメントな企業の方々と会う機会が増えてきて、年上の方々と接することで、経験の差は埋められないということを強く感じました。それは、壁というより尊敬すべき点であると学びました。人脈もそうですし。一朝一夕ではなし得るものではないですもんね。

--小野さんの尊敬する人はどのような人ですか?

 ソニーの創業者である盛田昭夫さんは尊敬する人の一人です。学生時代に起業のおままごとみたいなことを始めたとき、ソニーの理念を学びました。あの理念は本当に素晴らしい。もう一人は、三国志の諸葛孔明かな。

--おっ!ここにも歴史上の人物が登場しましたね。では、研究肌の小野さんにとって好きな本、何度も読み返す本はありますか?

 継続して読み続ける本はないんですが、「ビジョナリーカンパニー」は良かったですね。明確なビジョンがあることに対してのみ、人はモチベーションを維持できると思っています。

高みを目指す想いの根っこ

--忙しい中でも時間を割いてやってしまう趣味などはありますか?

 結構飽きっぽいんですよ。今はゴルフにどっぷりはまっていますが、以前から継続してゲームは大好きです。RPG(ロールプレイングゲーム)は寝ずに2〜3日かけて終わらせます。『三国志』のようなリアルタイムシュミレーションゲームも大好きで、こちらも寝ずにやってしまいますね。

--最後になりますが、これまでのお話を聞いて、友人から引き出された「より高みを目指そうという気持ち」。それはもっと以前から強く心の中に眠っていたような感じを受けました。ご自身のもっと深いところには何があるのでしょうか?

 んー。実は僕の家、つまり小野家は4代ほど前までは札幌の中心地を広く押さえる地主になるまで事業を成功させたようですが、3代ほど前に事業に失敗し夜逃げするように土地を引き払って今に至ったようです。都落ちとまでは言いませんが、幼心の頃は過去の栄光の話しを親族から聞きながらも両親の苦しい生活を見ていたため、成功から底辺へ追いやられた感じを肌で感じていました。ですから、漠然とですが小野家を再興する意味でも何か形に残したいとは思っていましたね。

 そして、もう一つ。小学校のとき内向的なあまり2年間程度、登校拒否して入院していたんです。当時生活が苦しかったはずの家族に随分と金銭的にも精神的にも迷惑をかけ、本当に申し訳なかったと思っています。正直、自分では親の負荷がどの程度のものだったかは分かりえないのですが、今は毎年両親を海外旅行に連れて行き、楽しく酔っ払い楽しい時を一緒にすごせることで、親孝行として少しでも穴埋めができればと考えています。苦しいながら真摯に生きつつ僕を育ててくれた両親に少しでもよりよい時間を返せれば、という想いは僕の「少しでも高みを目指せれば」という想いの根っこかもしれません。

--そうでしたか、でも、僕はそういう想いを小野さんが持ち続けていること自体が、本当の親孝行なのだと思います。ところで今度、ゲーム『三国志』の統一戦略を教えて下さい!

 いつでもどうぞ!小野家再興を目指す者のマニアックなテクニックをお教えします(笑)

Venture BEAT Project
こだまん(児玉 務)

1997年日本アイ・ビー・エム入社。ベンチャー企業との協業、インターネットプロバイダー市場のマーケティングを経て、2000年よりナスダック・ジャパンに出向し、関東のIT企業および関西地区を担当。帰任後は、IBM Venture Capital Groupの設立メンバーとして参画し、その後退職し米国へ留学。パブリックラジオ局(KPFA)での番組放送の経験を得て帰国後の現在は、「“声”で人々を元気にする」をモットーにラジオDJ、イベント司会、ポッドキャスティングの分野で活動中。「Venture BEAT Project」プランニングメンバー。好きな言葉は「アドベンチャー」。

ブログ:「Edokko in San Francisco 2007

趣味:タップダンス、ビリヤード、会話、旅、スペイン語

特技:アメリカンフットボール、陸上競技100m

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