「アニメ、マンガ、ケータイ」のデジタル化支えた創業技術者の信念 - (page 2)

西田隆一(編集部) 島田昇(編集部)2007年02月08日 10時45分

--マンガの業界もアナログなイメージが強いですよね。

 そうです。マンガ以外のほとんどの書籍物の制作行程がデジタル化されているにもかかわらず、なぜかマンガだけは未だにアナログが主流なのです。

 そのため、2001年にマンガ制作ソフト「Comic Studio」を発売したのですが、これがまた発売当初は全く売れなかった(笑)。コンシューマー向けのソフトを発売したのは初めてだったということもあり、多様なニーズをくみ取るのにはアニメ以上に時間がかかりました。

 また、ソフトを使いこなすにはITリテラシーが高い人でなくてはならないので、さらなるユーザーインターフェースの改善が必要ですし、大容量のメモリを搭載したマシンでなくては快適に動かないという点も大きなネックです。

 正直、アニメ業界みたいな急激な変化をすぐに期待できるとは思っていませんが、現時点でざっくりプロの漫画家が20万人くらいいるのですが、その中の1割には利用されています。逆に見れば、残り9割のマーケットが潜在需要としてありますし、アマチュアを含めれば100万人くらいのマーケットですから、ソフトの改善やパソコンの環境向上により、今後の成長は十分に期待できます。

--現在、売り上げの主流になっているケータイ関連事業ですが、何がきっかけで参入することになったのですか。

 当初はケータイ携帯をやるつもりはなかったんです。ただ、デジタルメディアの“出口”をもっと広げていけるだろうという発想で、最初はPDA向けなどを想定して開発を始めました。

 それが2003年11月にKDDIが「au」でパケット通信料の定額制を始めたので、このタイミングでサービス展開することを決めました。

--コンテンツビューア、オーサリングツール、配信サーバ、コンテンツ制作受託――の4つの事業をモバイルで展開していますが、どの事業が有望なのですか。

 一番伸びているのはコンテンツビューアです。導入サイト数も売り上げも伸び、シェアも現時点で9割程度を握っています。これも開始した当初は難しいのではないかと考えましたが、2005年の夏あたりからマーケットが確実に存在することが分かりました。現時点で、モバイル事業の半分程度を稼ぎ出す主力事業に成長しました。

--今後、携帯事業を軸に成長戦略を描くのですか。

 確かに、現時点では好調なモバイル事業が継続して伸びていけば十分な成長が望めるのですが、実はいろいろと仕込んでいることがあります。

 方向性だけを言うと、アニメやマンガだけに特化するつもりはなく、CG技術を活用してデジタル化を実現できる業界であれば、いろんな業界に事業を拡大していきたいと思っています。業界全体でふかんしてデジタル化できていない業界というのは、まだまだありますから。

--ソフトウェアを海外展開することは考えていないのですか。

 国内アニメ制作の下請けをしている中国などではRETAS!PROが業界標準として利用されていますが、米国や欧州ではアニメの制作工程が日本と微妙に異なり、これをそのまま提案するのは難しいです。

 一方、Comic Studioは2006年に米国で販売しましたが、思った以上に売れ行きはよく、マーケットはあるという感触を掴みました。

--米国で日本風のマンガを描く人が増え、そこに向けてComic Studioを販売するというモデルが成功したら面白いですよね。最後に今回のIPO(株式の公開)で感じたことは何でしょうか。

 正直、RETAS!PROもComic Studioも発売当初は総スカンを喰らったわけですが(笑)、「絶対にアニメ業界はデジタル化できる」と信じ切って、自分が正しいと思うことを徹底的に貫いてきました。やはり、「これが正しい」と思ったことは、やり続けることが重要なんですよね。それと、「できるはずだ」と思う気持ち。それが大きかったと思います。

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