試行して成果をあげるWeb 2.0時代のネット広告

 インターネットの普及に伴い、メディアとしての価値が高騰したインターネット広告市場。2004年にはインターネット広告の市場規模がラジオ広告を超え、さまざまな広告形態が生み出されてきた。Web 2.0時代を向かえ、今後インターネット広告市場はどのような展望を遂げていくのか。New Industry Leaders Summit(NILS)にて「Web2.0時代のインターネット広告の展望」と題したセッションが開催され、ネット広告業界に関わる4社の代表がWeb 2.0的広告への取り組みを語った。

 このセッションに登壇したのは、オプト代表取締役CEO 海老根智仁氏、サイバー・コミュニケーションズ 執行役最高執行責任者 山下啓一氏、セプテーニ 専務取締役 兼 COO 佐藤光紀氏、そして配信技術の分野からドリコム 代表取締役社長 兼 CEO 内藤裕紀氏の4名。モデレーターにはRSS広告社 代表取締役社長 田中弦氏を迎えた。

Web2.0系広告の現状

 Web 2.0系の広告は現在大きく分けてロングテール型、集合地型、リスティング型、CGM型の4つの分野に分けられる。ロングテール型では、個人のサイトやブログなどに広告を配信し、トラフィックをまとめて広告料とするもの。

RSS広告社 代表取締役社長 田中弦氏 RSS広告社 代表取締役社長 田中弦氏
アフィリエイトやアドセンスに代表されるコンテンツ連動型広告がある。集合地型は、SNSやブログなどで広告主にとって口コミ価値の高い広告をシェアして掲載料を取っている。

 このようなWeb 2.0系の広告について、広告主はどのようにとらえているのか、代理店はどのような売り方をしているのか、モデレーターの田中氏が各社の現状での取り組みと課題について訊ねた。

オプト代表取締役CEO 海老根智仁氏 オプト代表取締役CEO 海老根智仁氏

 オプトの海老根氏は、Web 2.0的活動の中で代表的なものとして、口コミを発展させ企業のブログを作っていく、ブログをはじめとする口コミデータを企業にレポートする、ロングテール的業務としてEC企業の活動を支援、自社でロングテール的営業活動を特定分野で展開するという4つの取り組みがあると述べた。

「特定分野というのは、自社で会社を設立し、全国の不動産物件を集めています。それをまとめてヤフーさんに提供するため、クラシファイドという会社を設立しました」(海老根氏)

サイバー・コミュニケーションズ 執行役最高執行責任者 山下啓一氏 サイバー・コミュニケーションズ 執行役最高執行責任者 山下啓一氏

 サイバー・コミュニケーションズでは、メディアレップとして、キーワード型の広告やSEMのコンテンツマッチ、検索機能、CGMといわれるコミュニケーション分野で、何をどう拾い上げて価値あるものに仕立てていくかを課題としている。

「現状では、CGMの分野でどうまとめて効率を上げていくか、というところに取り組んでいます。モデレーターの田中氏と一緒に、RSS情報から中身を拾い上げ、そこに合致した広告を出し分けていくというトレンドマッチを行っています」(山下氏)

 セプテーニの佐藤氏は、Web 2.0的広告手法で一番伸びているのがGoogleのアドセンス、アドワーズであると述べ、Googleとの技術的な提携、APIの接続によって上げられた成果を語った。

セプテーニ 専務取締役 兼 COO 佐藤光紀氏
セプテーニ 専務取締役 兼 COO 佐藤光紀氏

「ホスティング、検索の広告に必要な入札を自動化するという課金ツールを商品化しています。2点目に、キーワードを短時間に大量アップロードしていく。運営効率を上げるための業務アプリケーション。3点目に個人企業向けのミドルウェア対策。APIの場合、つながれる側の検索エンジンについては、これまで収益が高まっていく仕組みでした。しかし、最近では徐々にその中間の領域が生まれてきているという認識を持っています」(佐藤氏)

世界最大の広告代理店Googleの脅威

 セプテーニの佐藤氏は、Web 2.0的広告手法で一番伸びているのがGoogleのアドセンス、アドワーズだと述べたが、サイバーコミュニケーションズの山下氏も同意し、脅威を感じているという。しかし、コンシューマーがすべてインターネットだけに接しているわけではなく、ユーザーに情報を伝えていく中では、トータルで管理していかなければならない。クライアントが求めているのはGoogleだけでないという。

「今のテレビの視聴時間が半分になることはあっても、新聞ではどうか、バランスを取っていかなければならないと思う。その下に、今度はインターネットの中でどういう予算を配分すればいいかという問題があるんです」(山下氏)

配信技術がデッドスペースをメディアに変える

 Web 2.0的広告の配信技術の面から、ドリコムの内藤氏がインターネット上にあるデッドスペースについて指摘し、これを今後どのように広告メディアに変えていくかという課題であるとしている。

ドリコム 代表取締役社長 兼 CEO 内藤裕紀氏 ドリコム 代表取締役社長 兼 CEO 内藤裕紀氏

「電通が発表したインターネット市場は2005年で2808億円です。しかし、ここにも隠れたプラスアルファという広告市場があるのではないか。住宅、求人、教育、旅行、車といったカテゴリーは、市場として含まれていないのではないかと考えています。私達は、このロングテール広告を獲得に取り組んでいるところです」(内藤氏)

 内藤氏の発言に対して、セプテーニの佐藤氏、オプトの海老根氏が同じ形態の取り組みをしていることを明らかにした。情報=広告となるカテゴリーが増えてきていると指摘。それに伴い自動的に広告を取りに行く、かつそれを管理していく手法が重要になってくると考える。

 自動的に広告が入るという点で、田中氏はオプトが取り組んでいるクラシファイド広告の現状について話を振った。海老根氏はチラシなどの市場がクラシファイド広告に変わっていく可能性があるという。

「アメリカでは、すでにクラシファイド広告は不動産や人材、車という領域で始まっており、今後、いっそう多岐にわたってくると思います。しかし、それを集めるにあたって営業組織を組成しなければならないか、という点が問題になってきます。全国から自動的にどう集めるか、それが今後の課題かもしれません」(海老根氏)

 その場合、クラシファイド広告を掲載する専門メディアを新たに作るか、既存メディアに載せていくのかという話になると内藤氏は指摘する。デッドスペースを広告スペースに変えていくことが必要となる中、これから注目すべきは、「売れてないメディア」が重要になってくるのではないかという点ではないか。

総合広告とネット専業広告の新たな関係

 最近では、ライバル関係と見られていた総合広告代理店とインターネットを専業とする広告代理店の提携が増えてきている。クロスメディアのアフィリエイトも登場し、両者の垣根がなくなってきているというのが現状だ。

 海老根氏は、2005年末に電通とインターネットマーケティング全分野で提携したことに触れて、1月から提携委員会を開始し、今のところ共同メディア企画、アクションクリックにアフィリエイト、両者でのセールスツールの開発で成果を上げていることを紹介した。

 Web 2.0の広告から始まり、セッションの最後では広告の2.0的話題にまで発展していった。今後、内藤氏がどのような配信技術を生み出すか、また、各社が語ったWeb 2.0への取り組みの成果を目にする日も近いことだろう。

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