2005年12月、Windows Mobile搭載のW-SIM対応端末「W-ZERO3」を発売して以来、スマートフォンを中心とした新たな技術展開に、ユーザーのみならず、企業間でもPHSに寄せる期待が高まっている。
今後、PHSがどのような進化を遂げるのか、New Industry Leaders Summit(NILS)のセッションでは、「ウィルコムの事業展開−進化するPHS」と題し、ウィルコム経営企画本部長の喜久川政樹氏とアッカ・ネットワークス代表取締役副社長の湯崎英彦氏、サイボウズ取締役副社長の津幡靖久氏が今後のPHSの展開を語った。モデレーターは、カーライルグループの吉崎浩一郎氏が務めた。
W-ZERO3が製品化した背景には、W-SIMという無線モジュールの開発がある。4cm x 2.5cmの大きさのモジュールにPHSの音声通信、データ通信、アドレス帳などの機能がすべて載っている。これまでの電話機は数十万台単位からの発注しか受けられなかったが、このW-SIMの登場で、数千台単位での発注が可能となった。
「数千台での発注が可能になったことが、さまざまなベンダー参入の要因になっています。例を挙げると、玩具メーカーのバンダイさんがW-SIMを使って子供向けの電話機を開発しています。これまで玩具メーカーが電話を作るなど絶対に考えられなかったことですが、すでに実現しているのです」(ウィルコム喜久川氏)
ビジネス向けの例では、サイボウズのグループウェアをW-ZERO3に搭載し、また、アッカのIP-VPNなど、アライアンスを組んでマーケットの拡大を図っていくという。
「Windows Mobileが載っているという汎用性に期待が集まり、新たなマーケットが開拓されていくわけです。現在、こういう提携が自然に進んでいる状況です」(喜久川氏)
NTTドコモ、auなどは、通信から端末、プラットフォーム、アプリケーションまで、すべてiモードまたはEZwebを中心に組み立てられている。いわゆる垂直統合型だ。それに対してウィルコムは、フルブラウザの次にWindow Mobileを載せ、定額制という課金システムにして、サービスやネットワークをできるだけオープンな仕組みで作っている。他企業との提携を前提とした水平展開型のビジネススタイルである。
そして、喜久川氏は「アプリケーションウェア、あるいはコンテンツなどに関して、いろいろな提携を進めていきたい」と今後の提携への期待を語った。
ウィルコムと事業提携したサイボウズは、MVNO(仮想移動体サービス事業者)やMVME(MVNO事業者に対して事業企画や課金・請求、顧客サポート、端末・回線・顧客管理などのバックエンドソリューションを提供する事業者)という形でさまざまな階層に分化していき、それぞれが組み合わさって提供していくという流れになっていることに着目。基本戦略は、MVNOとしてのサイボウズ、MVMEとしてサイボウズの出資会社であるインフォニックスという組み合わせで事業を展開していくという。
「それに加え、携帯電話のアプリケーション開発で、サイボウズの業務・資本提携をしているゆめみに協力していただく。キャリアとしては、ウィルコムさんと組むことによって一通りの縦のラインが完成している状況。今後は、できればW-SIMを使った携帯端末をサイボウズブランドで開発し、ユーザーを獲得していきたい」(サイボウズ津幡氏)
同じくウィルコムとの事業提携先であるアッカ・ネットワークスの湯崎氏は、モバイルにクローズドな環境を作ることがアッカの連携するポイントだという。
「当社はクローズドなネットワークを作ることを得意としている。これまでは固定系だけを手がけてきまたが、今後はウィルコムさんの端末を使い、企業内などモバイルでもクローズドな環境を作っていくことが可能になる。当然、会社のサーバを経由してインターネットにもアクセスできるという、オープンにも繋がる環境を簡単に構築できる。サイボウズのアプリケーションをその上に載せれば、非常に高いセキュリティでサービス展開ができる」(湯崎氏)
そのために現在進めているのが、アッカ・ソリューションプランだ。これはアプリケーションとネットワークの組み合わせで、ソリューションを作り、顧客に提供していくというもの。ウィルコムとは、現在のアクセス部分を共同して展開していく形になる。
三者のセッションの終了後、参加者から「W-SIMは一般ユーザーも自由に使えるようにハードウェアの仕様を公開するのか」という質問が挙がった。
それに対し喜久川氏は、ウィルコムが中心となって運営している「WILLCOMコアモジュールフォーラム」に参加していれば、
今回のNILSはWeb 2.0をテーマとしているが、このセッションはアプリケーションサイドではなく、ネットワークインフラの話が中心となった。しかし、「インフラサイドの動向を無視してWeb 2.0を語ることはできない」と、プレゼンテーションの最後に吉崎氏が指摘した。
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