ボトムアップの情報共有で非構造化データが増加する際に課題となるのが、データの扱い方だ。モデレーターの竹内氏による「非構造化されたデータは実際に使えるのか」との問いかけに対し、谷本氏は、「情報の目利き役を民主的に行うべき」としている。これまでは、上司や担当者が「この情報はいい情報なので読んでおくように」と決めていたものを、「皆がいいという情報はいい情報だから読んでおこう」という考えで実行するのが民主的な情報共有法というわけだ。
また、基本的に非構造化されたデータから成り立つWikiは、管理面で問題にならないか、という疑問も沸いてくる。この点についてMayfield氏は、ある銀行での事例を紹介した。銀行というのは非常に規制の厳しい業界なため、Wikiを導入する際に「ドキュメントはすべて事前に検閲すべきだ。内容もチェックしなくてはならない」と大騒ぎになったという。しかし、実際にはWikiは、誰が何を書いたのか、どこを修正したのか、すべて履歴がわかるようになっているため、「すべてがディスクローズされており、逆に検閲がしやすい仕組みであることを理解してもらえた」(Mayfield氏)と、スムーズに導入が進んだ例を挙げた。
さらに竹内氏が指摘したのは、Wikiの利用法についてだ。ボトムアップで現場が自由に使えるシステムという特徴を持つWikiだが、「やはりコンサルティングが必要な部分もあるのではないか」というのが竹内氏の考えだ。
これに対してMayfield氏は、「実際にはトレーニングを行ったり、ベストプラクティスを紹介したりといったこともある。ただ、表計算ソフトの使い方にしても、最初は誰もわからなかったが今では誰でも自由に使っている。Wikiもきっとそうなるだろう」としている。
また谷本氏は、「Wiki自体は使いやすいツールなので、いくつか上手な利用法を提示すれば自然に学べると思うが、有効な方法としては、ユーザー同士がコミュニティを作り、そこで利用法や悩み相談のようなことを自由にやりとりできればいい」と提案した。
竹内氏の最後の質問は、こうした市場に大企業や競合企業が参入してくることに対して、Mayfield氏や谷本氏がどう考えるかについてだ。
Mayfield氏は、Socialtextがエンタープライズ向けWikiを提供する最初の企業として登場したことは有利だとしつつも、「大企業やベンチャーも参入してくるだろう」と述べた。ただ同氏は、MicrosoftがSharePointの次期バージョンにてWiki機能を搭載しようとしていることや、IBMが同社独自のWikiを研究中であることについて触れつつも、「競合の参入は歓迎する」という立場だ。競合が増えることで市場が活性化され、成長も期待できるためだ。
谷本氏も、MicrosoftやIBMはもちろん、Yahoo!やGoogleもこういった市場に参入する可能性が高いとし、「大手との競合は避けられない」と述べる。その中で同氏は、「自分たちがどういう部分に強いのか、それをアピールしていく必要がある」とし、リアルコムでは非構造化データの履歴をうまくコンテンツマネジメントシステムに生かす仕組みを提供しているとアピールした。
なお、Socialtextは2005年10月にSAPからの出資を受けている。このことについてMayfield氏は、「SAPからはデータ管理や企業向けビジネスという点において多くを学んでいる。一方Socialtextとしては、SAPに草の根的なデータの収集方法やそれをどう扱うかについて教えている」と述べ、、両社の関係が良好に進んでいるとした。
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