企業とユーザーをつなぐ検索エンジンマーケティング(SEM)が重視されるなか、PCよりも情報のライフサイクルが早いといわれるモバイルにおける検索サービスは、今後どういった方向に進んでいくのだろう。
モバイル・ビジネス・サミット 2007の特別講演では、検索エンジン最大手Googleのストラテジック パートナーディベロップメント マネージャーであるJohn Lagerling氏が、同社のモバイルビジネスの展開について語った。
「ユーザーと情報をどうつなげるか」――さまざまなサービスを提供する際に、Googleは、このことを常に念頭に置いていると講演の冒頭でLagerling氏は述べた。
「たとえば、病院へ行って薬を出される。この薬の詳細を知るには薬局で聞くというのがこれまでの情報収集方法でした。しかし、今では携帯電話で薬の名前を入力すれば簡単に情報を得られます。全世界の知識がユーザーのパワーになること。これがGoogleにとっての最終的な到達点です」(Lagerling氏)
企業とユーザーをつなぐための検索連動型広告「Google AdWords」は、「広告も情報のひとつ」という考えから生み出された。世界中の情報を整理することがGoogleの共通のテーマであり、Googleが成功した理由もここにあるとLagerling氏は明かす。
「検索エンジンは昔からありました。しかし、Googleがそれに新たな形で取り組み、スパイダー型のロボット検索を提供し、大きな革命となりました。単語分析だけでなく、単語の価値、そしてページの検索結果がユーザーにとってどの程度価値があるか、アルゴリズムとして構築したわけです」(Lagerling氏)
Google AdWordsでは、一番高い広告料を支払った広告主を一番上に表示するのではなく、ユーザーにとって意味があると思われる情報を常に優先している。実際にクリックされる比率と広告単価を併せて広告掲載順位を決めるため、ユーザーが求めている情報と広告のマッチング精度が高まるという仕組みだ。
同時に検索結果の精度も重要だ。検索結果というコンテンツがユーザーのニーズに合致していなければ、広告主の獲得は難しくなる。Lagerling氏は、ここでPCで提供する検索サービスのルールを披露した。
1つ目のルールは「ユーザーが理解可能な形にすること」。集められるすべての情報を流すのではなく、ある程度セレクションすることで、一人の人間が吸収できる量にするのが重要であるということだ。2つ目は「ユーザーとの関連性」。同じ検索キーワードでも意味の違うものがあるため、Googleはユーザーの検索履歴をもとに目的にあった結果を表示するようにしている。3つ目は「反応速度」。ユーザーが求める情報をすぐに得られるよう、検索結果が表示されるまでの時間をできるだけ短くしている。4つ目は「ユーザーインターフェース」。これは単純にサービスの操作性を向上させるだけでなく、検索結果のどの部分が広告であるかを明確にし、純粋な検索結果を明示することも含む。Googleはこれら4つのルールをモバイル版サービスでも同様に意識しているという。
Lagerling氏は日本特有のモバイル文化の特徴を端的に表す数字として、「日本ではネットといえば携帯電話でのネットを連想する人が全体の4分の1に上る」というデータを挙げた。まだインターネットが十分普及していないころからNTTドコモのiモードがスタートしたため、最初に持ったメールアドレスが携帯電話用だった人も多いはずだと指摘した。Google全体としても、「日本=モバイル」と考えていると述べ、携帯電話のヘビーユーザーにもGoogleのバリューを提供したいと考えているという。
「一方で、トレンドとしてはPCとモバイルの検索に違いはありません。ロングテールはモバイルでも変わらず、トップ100の検索ワードは全体の12%程度で、多様な検索が行われています。トップ100の検索ワードのうちダウンロードコンテンツは1桁台で、ユーザーは着メロなどのコンテンツ以外にもリーチしたいと考えていることがわかります」(Lagerling氏)
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