IT関連の人材市場に、ようやく回復の兆しが現れ始めている。そのなかで動きが目立つのが、ネット系企業の一角だ。ここでは高い技術を持った人材の獲得競争が過熱し、各社とも採用に苦慮しているという。いまIT技術者をめぐる人材市場に何が起きているのか?リクルートエージェントのテクニカルアドバイザー・大月英照氏を取材した。
「ここ1〜2ヶ月の動きです。ネット系業界で、優秀な技術者を確保するのが困難な状態が、急速に強まっています」
リクルートエージェントの大月英照氏(ITマーケットRA2グループリクルーティングアドバイザー)は指摘する。
大月氏は大手SI企業出身。第三セクターの大型案件などで開発経験があり、学生時代には東欧諸国の市場むけにウェブアプリケーションの開発販売を手がけた。携帯端末の開発にも詳しい。その大月氏によれば、もともとネット系の人材は業界全体のたった1%程度に過ぎず、トップレベルのスキルを持つ人材には希少価値があったという。足元で、さらに奪い合いが加速している背景には何があるのだろうか。
大月氏はいう。「現在の企業の人材に関するトピックを分析するには、過去1〜2年ほどさかのぼって考える必要があります。この期間の求人市場が冷え込んだ最大の要因は、金融機関の合理化に伴う統合事業の大型案件が一巡した事です」
プログラマやSEはこれまで主に、組込み事業者が中心的役割を担う金融事業の現場で働いてきたという。こうした案件が昨年までにほぼ完了、収束してしまったため、人材が余ってしまったのだ。
「こうなると多くの企業にとってIT投資はプライオリティの低い案件になります。だいたいのインフラはすでに揃ってしまい機能も過不足ないため、付加システムの開発には誰も手を出しません。そのような状況のなか、リーマンショックに端を発した景況感の冷え込みで、製造業の投資も大幅に削減されました。昨年夏頃は、これらの要素が複合的にIT需要の落ち込みを招いたのです」(大月氏)
状況に変化の兆しが見られるようになったのは、ようやくここ最近という。経済状況も復興し、少しずつ付加的案件が復活。今年の8月、9月は金融機関も徐々に運用に目を向け始めるといった、上向きの動きが出ているようだ。
「そして風向きを変えたのはクラウドコンピューティングの隆盛です。サービスを利用する側にとって既存システムとの変化が見えにくく、革新性を強く感じやすいとは言えません。ですが導入を決めればシステム的な変更が必要ですから、開発ニーズは回復しつつあります」
だが、応募者に求められるスキルも変化してきている。ネット系企業が人材確保に奔走する理由は、単純に人材への需要が高まった事だけが背景ではない。(後編に続く)
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