事業は安易に方向転換せず、やりきることも重要--サムライインキュベート

 「天王洲アイルをスタートアップの拠点にする」――そんな思いを胸に、2011年11月に天王洲アイルにインキュベーション・コワーキングオフィス「Samurai Startup Island(SSI)」をオープンしたサムライインキュベート。

 2009年6月に投資ファンド「Samurai Incubate Fund1号(Samurai Fund1号)」を設立してから、一貫してスタートアップの支援を手がけてきた同社だが、まもなく1号ファンドの償還時期を迎える。ノボットなどの気鋭企業を輩出した同社は、スタートアップへの投資についてどのように考えているのか。代表取締役CEOの榊原健太郎氏に聞いた。

--サムライインキュベートでは数多くのスタートアップに投資をされています。対象サービスの傾向などを教えてください。

 現在サムライインキュベートが投資しているのは39社です。現在は毎月60社ほどの応募があります。ただ、すでに投資した会社などの紹介でなければ投資はしないという方針です。最近では創業してすぐに収益性が見込まれるサービスが好まれる傾向もありますが、やはり探しているのは世の中を変えるようなものですね。

 サムライインキュベートには100ほどの事業アイデアがあって、それに合致するかどうかを参考にしています。それと重要なのは「サムライ魂」。私たちのポリシーのようなものですが、これを共有できる方にご参加頂いています。


サムライインキュベート代表取締役CEOの榊原健太郎氏

--投資と支援プログラムについて教えてください。

 基本的には、一律で3000万円の評価をさせてもらって、その上で普通株の15%、450万円を上限に投資しています。もちろん例外もあって、「次の増資をしない」というお話で初期に1000万円を投資させてもらうということもあります。しかしこういう比較的大きめな出資はもともと仲が良かったり、関係がある場合がほとんどです。

 株の持ち方についてはさまざまな方が言及しているとおり、最初に高すぎる企業評価を付けたり、大量の株式割合をとってしまうと次の投資が難しくなります。この点は出資先によく説明し、さらに必ず他のインキュベーターやベンチャーキャピタルを全部回って話を聞いて頂くようにしていますね。

 投資が決まったら私が毎週、事業についてのメンタリング――経営から営業、マーケティングなどの戦略ミーティング――を実施しています。実施の頻度は半年経過すると隔週に1回とし、1年経過もしくは単月の黒字を3カ月連続で達成すると月に1回、という具合に徐々に減らしていきます。またそれとは別に、毎月15回ほど事業戦略に関する講義を実施しています。2012年は米国ニューヨークやシリコンバレーのほか、フランス、インドといった海外でのイベントも計画して、支援先の資金調達などをサポートしています。

--例外的に大きく株式の割合を取って出資をする場合があるとのことですが、おっしゃるように次の増資が難しくなる可能性があります。どういった場合にそのような出資をされるのでしょうか。

 すでに収益の見込みが立っている場合などです。初期の投資金で1000万円あれば利益が出て、次の調達をせずとも上場やM&Aが見込めるケースしかやりません。あと、もともと経営者が2回目の起業だったり、実績があると分かってる場合ですね。まあ、これはまれです。

--ご自身でも金融経験がないことを仰っておられますが、どうしてファンドを立上げたのですか。

 実は創業当初に作ったのはスタートアップをターゲットにした支援会社でした。ですがご存知の通り、資金力に乏しいスタートアップから費用を取るという行為はタブーです。それに気がついて、ベンチャーキャピタルをいくつか回って相談してたんです。そんな中で「ファンドをやったらどうか」とアドバイスを受けて作ったのがSamurai Fundでした。

 同年代の投資家だったり、すでに上場を果たしている事業家など、世の中を少しでもよく変えたいと考えている人達が中心となってバックアップをしてくれています。ファンドの規模は1号は5150万円、2号が6200万円。現在運用している3号が2億1000万円で、半分ほど投資が進んでいます。6月で10社に投資が決まっているので残り10社。合計で60社になった時点で次のファンドの計画を進める予定です。9月から10月ごろに3号と同等のものを計画中です。

--金融の経験がないままでファンドの運用ができるものなのでしょうか。

 これまでは本当によい人に恵まれました。たとえばノボットやシンクローグなど、大きく成長してイグジットを果たしてくれる事例がでてくれました。これらにけん引されてファンドとしてもよい倍率になっています。現在支援している39社でも6割は単月黒字が出たり、増資のお話が出てきている状態です。資本政策などで分からないことはLP(リミテッドパートナー)さんに聞いてます。日々勉強です。

--ノボットなどの明るい話題がある一方で、厳しい状況の投資先も出てきていると聞きます。

 そろそろ1号ファンドの償還時期が迫っているので、償還のタイミングでどうするかを経営者のみなさんと一緒に考えることになると思います。ただ、1号ファンドに関しては9社中すでに2社がイグジット、7社は黒字化しているので、大きな問題にはならないと思います。

 1号の償還期限は実はちょっと短いんです。これも金融の経験がまったくないままに始めてしまったのが原因ですが、3年で短期的な結果を出そうとする私の考え方には合っていてよかったと思います。

--ファンドの規模が小さいので、純粋な管理報酬だけでの運営は難しいと思いますが、どのように支援事業運営をされてるのでしょうか。

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