モバイルビジネス市場の展望を探る - (page 2)

永井美智子(CNET Japan編集部)2004年12月15日 10時00分

TVとケータイは補完関係にある

佐野:私がまず申し上げたいのは、「TVとケータイは両思い」ということです。一部ではTV業界と携帯電話業界の仲が良くないと言われているようですが、そんなことはありません。

 2006年春からは、携帯端末向けの地上デジタルテレビ放送(1セグ放送)が始まります。現在でもボーダフォンの端末でテレビ放送が受信できるものがありますが、これはアナログ放送なのでどうしても画面がちらつきます。デジタル放送ならば、くっきりとした映像が楽しめます。

 また、デジタル放送のもうひとつの特徴である「データ放送」を通常のテレビ放送に組み合わせることで、モバイル業界とのバリューチェーンを築こうとしています。例えばデータ放送でテキスト情報を流して、そこにリンクを張ってインターネットに接続するといったことが考えられます。

 この新しい仕組み作りに取り組むにあたって意識してきたのは、TVとケータイの特性の違いへの着目です。TVはプッシュ型のマスメディアですから、1つのコンテンツを大勢に送るのは得意です。ユーザーが何か操作をしなくても、自動的に情報は流れてきます。しかし、ユーザーの属性や今いる場所ごとに情報を変えて伝えることは苦手です。また、伝えられる情報量にも限界があります。

 これに対して携帯電話はプル型のパーソナルメディアです。ユーザーごとに情報を変えることもできるし、オンデマンド配信や課金も得意。情報量も無尽蔵といっていい。しかし1つの情報を大勢に送ることは苦手ですし、ユーザーはいちいちクリックする必要があります。

 こうして見てみると、TVの得意なことは携帯電話が苦手ですし、逆に携帯電話が得意なことがTVは苦手なんです。つまり、お互いの得意な点を組み合わせたサービスがバリューチェーンを作り出すことができると思います。

 携帯電話ユーザーは「指寂しい状態」と言えるでしょう。電車を待っている駅構内など、ふと時間が空いた時に携帯電話のディスプレイを見ている人はたくさんいますが、ディスプレイを見ながら親指が5秒以上止まっている人はいない。メールのやりとりをしたり、コンテンツを見たりしているからでしょうけども、もし携帯電話のディスプレイでテレビを見ることが可能になったとしても同じことが起こると考えています。携帯端末向け地上デジタル放送は無料放送の予定ですし、携帯電話でTVを見る人も増えるでしょう。そこでテレビ内容に関連した情報などがデータ放送で同時に表示されていれば、そもそも指が寂しいわけですから、親指がついつい動いてしまう。つまりリンク内容の深い階層までどんどんクリックが進み、テレビの新しい世界にさらに入り込んで来てくれるのでは…という予測をしています。

一方、広告媒体としてのメディア価値についてですが、携帯電話は画面が小さい分だけインプレッションは低いかもしれませんが、購買行動直前の「背中の一押し効果」が高いと思っています。外出先などでも見ることが想定されますから、CMを見た直後に購買行為に到達する可能性が高くなる。購買行動に直結できる可能性が出てくるのです。つまりリーセンシー効果が非常に高いメディアであるという分析をしています。

堀:携帯電話でTVを見る場合、電池の持ち時間が大きな問題となりますね。

佐野:省電力化などの工夫によって、連続再生時間3時間以上などさらに長くはなっていくものと思いますが、将来的には燃料電池などさらなる新しい技術にも期待したいですね。

堀:PC上にポータルサイトはたくさんありますが、携帯電話の場合、いわゆる公式サイトはiメニューのように通信事業者側がポータルサイトを管理しています。そして、公式サイトと認められたものだけがポータル上で露出してもらえたり、課金や認証を代行したりしてもらえるわけです。

 こういった現状で、テレビ放送とデータ放送が組み合わさることで新たなテレビポータルとも呼べるものが生まれようとしています。また、ビットワレットさんも弊社サイバードと一緒に携帯電話向けのポータルサイトを開設する予定です(編集部注:12月6日に「Mobile Edy.jp」を開設)。

宮沢:やはり課金できるポータルの存在は大きいと思います。携帯電話でどうやって代金を回収するかが最も重要です。回収の仕組みがないとコンテンツが充実しません。Edyを利用した決済のできるポータルに大きな将来を感じております。

佐野:課金の問題というのは非常に重要ですね。ぜひ我々も使わせて頂きたいと思います。

堀:2つのポータル間で連携と言うこともあり得るのでしょうか。

宮沢:私も実際1セグ放送のデモを見て、目から鱗が落ちる思いでした。これまでの携帯電話で受信したTV放送はノイズが目立ちましたが、1セグ放送の映像はくっきりはっきりとしている。我々もぜひ連携したいと思っています。

堀:お二方の今後の活躍に期待したいと思います。本日はありがとうございました。

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