韓国IT業界ビッグ3と、ソフトウェア市場の現状 - (page 2)

 ソフトウェア強国になれないもっとも大きな理由として、韓国独特の市場構造が挙げられると、記事には書かれている。韓国のソフトウェア市場といえば、MicrosoftAdobeなど数企業を除けばパッケージ市場はほぼ皆無に近く、SIしか市場が存在しない状態であるうえ、その構造自体が歪んだものとなっている。その理由を、大規模発注の企業対象の市場に焦点を当てて考えてみると、先にあげたビッグ3が出てくることが、記事では指摘されている。

 ビッグ3をはじめとした大手SI企業は契約上では契約主であはあるものの、実際の作業は下請け企業に任せきり、その下請け企業には“食いつなぐことができる”程度の対価しか支払わず、利益のほとんどを持っていくという状況だ。それでもSI市場しかない韓国において下請け企業は生き残りのために仕事を受けざるを得ない。劣悪な環境で働く下請けの技術者が、安い賃金で体に無理をかけてまでソフトウェア開発に従事できるかといえばそうではなく、業界を離れる人が後を絶たない。

 逆にSI企業では、極端に言えば必要ない人員を配置してまで法外な人件費を得る場合もある。仕事量は少なくとも、下請け企業の3倍もの賃金を受け取る大手SI社員もいるという。

 一方、仕事を何でも大企業に一括して任せてしまえばいいという、発注側の仕事のやり方にも問題はあると私は考える。韓国政府の情報通信部による発表をここで改めて調べてみると、2006年下半期に政府機関の調達庁が発注した231件の情報化事業のうち、中小企業へも仕事を分配発注した例は2件しかなかったという。さらに「民間企業でも、発注を大企業や中小企業に分配した事例は極めて少ない」と明かす。これにより競争がほとんどない独占的な市場構造が作られるのだ。

 こうした現状を見るに見かねた政府は2007年5月から、総規模が10億ウォンを超える公共機関による情報化事業のうち、1件あたりの規模が5000万ウォン以上のソフトウェア開発に関しては、複数企業に分離発注するという「ソフトウェア分離発注ガイドライン」を実施しており、このことは記事にも書かれている。これに従い、大規模な情報化事業が分離発注された実例も既に出ている。ただしこの制度には強制力がないうえ、公共部門に限ってのことであるため、効力は弱いとの見方があるのも現実だ。

 発注する側が意識して分離発注してくれれば問題は緩和されるかもしれないが、現実はそう簡単にはいかない。最後に、記事では、韓国では現在、大企業が新聞などの報道機関や金融機関を所有することを制限しているが、この制限をSI業界にも適用すべきだと説いている。

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