少女ダンサーから感動演奏、事故映像まで--上半期人気動画トップ10 - (page 2)

佐々木 朋美2007年07月12日 23時16分

 こうした動画が登場する背景には、ある事件がある。火薬製造から建設、貿易など多角経営を行う大手企業、ハンファグループ会長のキム・スンヨン氏が、飲食店で自身の次男にけがをさせたとする男の元へボディガードを伴って行き、報復暴行をはたらいた事件だ。この事件によりキム氏は実刑判決を受け、社会に大きな衝撃と失望を与えている。キム・グラ氏制作による動画はパロディだが、今の韓国社会をよく反映している作品だといえる。

画像の説明社会風刺がたっぷりのパロディ映像

馬 VS ユニコーンの争いの行方は

 4位は「現代ユニコーンス、マスコットの屈辱」(閲覧数:315万3137、コメント数:138)。「現代ユニコーンス」はプロ野球チーム。その応援席にいるユニコーンの着ぐるみマスコットを、馬のかぶり物を着た人物がからかっている。最初はユニコーンも余裕を見せつつユーモラスに対応していたものの、力の強い馬男にひっくり返されてつい本気に。逃げる馬男を、かぶり物を脱いで追いかけ、周囲は失笑の渦となる。日常のハプニングを撮った、投稿動画の王道的な作品だ。

 5位は「韓国のマライア・キャリー!」(閲覧数:174万5410、コメント数:2147)。歌手志望の女性がマライア・キャリーの曲を歌うという内容なのだが、彼女の実力が並大抵ではないことから大きな反響を得た。コメント数も今回のトップ10の中でもっとも多い。中には「デビューしたらファンになる」と宣言するネチズンまでおり、動画1つでデビュー前から多くのファンを確保することとなった。

 6位は「K-1 WORLD GP 2007 ハワイ バダ・ハリ VS 藤本祐介」(閲覧数:109万6664、コメント数39)。格闘技イベントの「K-1」は、韓国のチェ・ホンマン選手も参加していることで注目度が大変高い。またPandora.TVではK-1の全映像を配信しているので、格闘技ファンも多く利用している。チェ・ホンマン選手出場の試合よりも多くの閲覧数を記録したこの一戦は王者決定戦であり、より多くの格闘技ファンをひきつけることとなった。

インスタント麺から見える文化コード

 7位は「イ・チャンホのジャパゲティ テロ事件〜」(閲覧数:77万9105、コメント数6)。「ジャパゲティ」は「スパゲティのやわらかさを持った麺」というコンセプトのインスタントジャージャー麺だ。動画の舞台は韓国男性の義務である軍隊。高圧的な先輩軍人に、後輩軍人のイ・チャンホがジャパゲティを作ることになるのだが、そのジャパゲティにこっそりつばを入れるチャンホ。先輩はつばが入っていることを察し、「お前が食べてみろ」と命令してチャンホを袋叩きにする。

 ここでは韓国軍の文化コードを随所に見ることができる。まず1つ目は後輩軍人のトーンの高い声。これはインターネット上で見られる、軍隊フラッシュ漫画の登場人物を真似ているものだ。このフラッシュ漫画は軍隊の不条理などを取り扱って、かつて大変な人気を得ていた。そして袋にお湯を注いで食べるという、ジャパゲティの食べ方。軍隊では鍋が提供されないため、実際にこうした食べ方をしている。軍隊で実際に起きていそうな出来事を、おもしろおかしく表現したこの動画。韓国男性なら自然と笑いがこみ上げてくる内容だ。

 8位は「鼻ボード演奏」(閲覧数:77万7172、コメント数:221)。これは脳性まひのため手を使えない障害者が、鼻でキーボードを弾くという内容だ。「私でもこれほどできるのだから、私より満足な身体を持つ皆さんに、できないことなんてありません」と人々を勇気づけるメッセージと共に公開されたこの映像は、多くのユーザーに感動と勇気を与えた。

 9位は「CCTVで撮影した衝撃的な交通事故現場」(閲覧数:71万6159、コメント数:337)。CCTV(監視用カメラ)が映し出した衝撃の交通事故映像集。信号無視や無謀運転で起きる追突事件の映像は大変生々しく、交通事故がどれほど恐ろしいのかを知らせるのに大きな役割を果たしている。

 10位は「笑ってみて〜^^*」(閲覧数:70万6701、コメント数937)。1人の女性が自宅と思われる場所で、曲に合わせて口パクをしながらダンスを披露する。この女性が、割合筋肉質のしなやかな体の持ち主であることが目をひきつけるだけでなく、ダンスの振り付けは日常生活のしぐさやスポーツの動きなどを取り入れている点が大変ユニークだ。思わず見入ってしまう魅力ある映像だ。

 Pandora.TVではこうした結果について「2006年まではダンスや音楽などエンターテインメント関連に限られていた動画が、最近では時事告発やパロディ、感動動画など、多様な形式で作られている」と分析している。

 動画内容の多様化は、何かを訴えたり表現したりする手段の1つとして、動画が多く使われるようになったということをも意味する。韓国に投稿型の動画は確実に根付いてきているようだ。

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