キャリアに対する展望というものは、前の世代と比べると大きく様変わりしている。本記事では、目まぐるしく移り変わる環境のなか、昇給や昇進、福利厚生、退職金制度といった点について未だに淡い期待を捨てきれないでいるITプロフェッショナルに向けて注意喚起を行っている。
筆者は9年間勤めていた会社である日突然、キャリアというものに対して抱き続けてきた幻想を打ち砕かれることになった。それまではずっと昇給を続けてきていたものの、所属部門がある企業に買収された結果、昇給が望めなくなったのだ。認めたくないことだが、当時はそのことを苦々しく思い、怒りすら感じていた。10年近くも献身的に働いてきたにもかかわらず、自らのキャリアがストップしてしまったという現実に我慢ならなかったのである。
あれから14年が経った今、筆者はキャリアというものに対してシニカルな見方をするようになった理由について考えているところだ。筆者の期待が高すぎたのかもしれない。同じ会社でキャリアを積むという考えが絶対正しいと思い込んでいたのかもしれない。自らの業界で起こっていた変化が目に入っていなかっただけなのかもしれない。あるいは、シニカルな見方をするのは、年を取ったせいなのかもしれない。少なくとも、働き始めた時に持っていたキャリアに対するイメージがもはや通用しないということは明らかである。以下は、これまでに起こった、あるいは現在起こりつつある変化にあなたの期待を合わせるうえで考慮する必要のある、もはや通説であると認識した方がよい10個の項目である。
以前であれば、大学を卒業すればプロフェッショナルとしての華々しいキャリアと、平均以上の給与を手に入れたも同然であった。しかし現在では、大学卒業者全員が高給職にありつけるという状況ではなくなっており、今後もこの厳しい状況が続いていく可能性もある。また、大学卒業資格を取得する人の割合がかつてないほど高くなっているため、IT関連の仕事で新たに人材募集が行われる際の競争率も高まってきている。Wikipediaによると、米国在住の25歳以上を対象とした調査では、52%以上が何らかの大学学位を取得しており、27.7%が学士号を取得しているという。専門性の高いITの仕事に就こうとすれば学位が必要となるという状況に変わりはない。ただ、極めて重要な学位を取得したからといって、夢に見たキャリアが保証されたことにはならないのが現状なのである。
筆者はかつて、同じ会社に5年以上勤めていれば、勤続10年を迎えるまでに何らかの昇進を経験できるだろうと信じていた。そして、勤続20年を迎えるまでには2度目の昇進を手にできるとも信じていた。しかし、現実は違った。昇進を手に入れるために転職しなければならなかったのだ。そして転職にはリスクが伴うこともある。
景気の後退によって大きな影響が生み出されている。2000年代に成人となった人々は、それまでの世代の人々に比べて昇進の機会が少なくなっているという。また、ソフトウェアエンジニアやデータベース管理者などのITスペシャリストというキャリアパスも、ITサービスに特化していない多くの企業では限られたものとなっている。あなたが技術者あるいはITスペシャリストとして活躍しようという意欲に溢れており、そういった企業で出世したいと考えているのであれば、より幅広いキャリアパスが期待できる管理者としての地位を狙った方がよいかもしれない。技術者から管理職への転身に成功した例はそう多くないとはいえ、不可能というわけではない。
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