映画「Young Frankenstein 」(邦題「ヤング・フランケンシュタイン」)には、次のようなシーンがある。フランケンシュタイン博士が初めてアイゴールに出会った際、アイゴールの背中にある奇妙なこぶを指さし、「わたしにはそれが治せる」と言うのだ。そして以下のような会話が続く。
「治せるって何を?」
「そのこぶだ」
「こぶって何のことだ?」
この下りは、常習的な否定の例として筆者のお気に入りとなっている。実際、実生活で自己欺まんの例に遭遇すると必ず、「こぶって何のことだ?」という台詞が筆者の頭の中を駆けめぐるのである。
従業員の考課を初めて行うという新任マネージャーに対して、筆者からアドバイスを1つ贈るとすれば、自らに都合の良い解釈をしたがるという人間の性癖を甘く見てはいけないというものになるだろう。言い換えれば、従業員が自らの至らない点について自覚していると思い込むのは最も避けるべき行為であるということだ。
ハーバード大学の社会・組織心理学に関するEdgar Pierce Professorであり、「Leading Teams:Setting the Stage for Great Performances」の著者であるJ. Richard Hackman氏は、Harvard Business Reviewにおける、期待を下回る働きしかできていない従業員に関する記事のインタビューに対し、「たいていの場合、本人は期待を下回る働きしかできていないことに気付いていない。われわれは皆、後付けのセンスメーキング(意味の形成)という素晴らしい能力を備えており、この能力によって困難な問題の原因が『自らによるものではない』と合理化してしまうのである」と述べている。
従業員が期待を下回る働きしかできていないという場合に考えられる他の原因、例えばお粗末なマネジメントや、不明確な目標といったものについては、ここでは考えないことにしよう。従業員が実際に期待に応える働きをしていない、あるいは仕事ぶりに何らかの問題を抱えており、あなたから何らかのフィードバックを行わなければならないという状況を考えてほしい。こういった場合、そのフィードバックが頻繁であるほど、そして具体的であるほど、建設的なものとして受け取ってもらえるはずだ。
例えば、エンドユーザーとのコミュニケーションに重大な問題を抱えている従業員がいる場合、当人に対してその旨を伝えるだけでは何も解決しないだろう。その従業員は心の中で、自分はエンドユーザーに誤解されているだけだと自らを合理化する可能性もあるためだ。このため、エンドユーザーがあなたのところに持ち込んだ内容を具体的に説明する必要がある。問題を明確にできるような実際の会話内容や電子メールをエンドユーザーが提供できるのであれば、さらに良いだろう。
また、従業員の時間管理に問題があるという場合には、期限を守ることができなかった具体的な作業の内容を記録しておくべきである。
要するに、問題のある従業員に対処する必要がある場合には、人間に元来備わっている自己防衛メカニズムと対峙するうえで、客観的なデータを武器にしなければならないというわけだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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