IT業界にはかつて、ITプロフェッショナルが希望の給与額を提示できるような素晴らしい時代があった。しかし、2000年問題の片が付き、ドットコムバブルがはじけるとともに、そのような時代は終わりを迎えた。企業はもはや、多くのプログラマーを必要としなくなったのである。また、サーバを新たに購入したり、その運用を任せるためのシステム管理者を雇用する新興企業の数も一転、大きく減少することになった。
同時期、米国産業界ではITに対する反動が各所で顕在化していた。それまで多くの企業は、ITがあらゆる問題の解決策となるはずだと信じ、ITプロジェクトに膨大な資金を投じていた。1990年代にはITによる生産性の向上が顕著であったため、多くの企業がITに対して過剰な投資を行い、あまりにも多くのことを先を急いで実行しようとしていたのである。その結果、大金を投じた大規模プロジェクトが大失敗に終わるという事例も数多く見受けられた。
景気後退に突入した2001年には、肥大化したIT部門が予算削減の格好の標的となり、多くの部門が大幅な縮小を余儀なくされた。2002年、2003年と景気後退が長引くなか、ITプロフェッショナルの多くは、この苦しい時期を乗り切ればまた元通りになるはずだと言葉を掛け合っていた。しかし不思議なことに、IT予算はその後も低く抑えられたままであった。IT部門の景気が回復することはなかったのである。
2011年まで時計の針を進めてみよう。ほとんどのIT部門は、未だにその影を引きずっている。技術サポート担当者の数が大幅に削減されたり、ヘルプデスクの役割そのものがアウトソーシングされたりしているのだ。また、ネットワーク管理者やサーバ管理者の数が大きく削減されたり、データセンターの役割の多くが移管されたりもしている。これらの仕事は、1999年にITプロフェッショナルへの需要が高騰した主な要因であった。こういった仕事は現在、完全になくなったわけではないものの、人材が不足することもなく、そのスキルに対する高い需要があるわけでもない。
これは、IT環境が劇的に変化したためである。従来からあるソフトウェアの多くがインターネットに移行したか、少なくとも社内のサーバにウェブブラウザでアクセスするサービスへと変わった。また、新しい技術に馴染めないベビーブーマーたちが定年を迎える一方で、技術サポートをそれほど必要とせず、使用するデバイスを自ら選択したいと考え、IT部門を生産性向上の妨げと見なすことの多いM世代(1982年以降に生まれた世代)が職場に増えてきている。
つまり今日におけるユーザーは、IT部門の支援をかつてほど必要としていないのである。ひねくれた見方をするITプロフェッショナルはそんなことなどないと主張するかもしれないが、この事実は変わらない。ほとんどの従業員はテクノロジを10年以上にわたって利用してきており、10年前に比べるとずいぶんとテクノロジに熟達している。また、ソフトウェア自体も進化してきている。完璧というにはまだ程遠いが、ずっと使いやすくなっているのだ。
では、今日のITプロフェッショナルにはどういった役割が残されているのだろうか。今後のIT分野での職種がどうなっていくのか考えてみよう。
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